視覚障害をお持ちの方やそのご家族にとって、日常生活での不便さや経済的な負担は深刻な問題です。「視力が低下しても障害年金の対象になるのか」「どの程度の視力低下なら認定されるのか」「申請手続きが難しくて何から始めればいいかわからない」といった疑問や不安を抱えている方も少なくありません。
この記事では、視覚障害による障害年金について、受給要件から具体的な認定基準、申請方法、認定のポイントまで、専門家の視点から詳しく解説します。読み終える頃には、障害年金申請への明確な道筋と、ご自身の状況での受給可能性が見えてくるはずです。
視覚障害でも障害年金は受給できるのか?
結論から申し上げると、視覚障害により障害年金の受給は可能です。厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」において、視覚障害は「眼の障害」として明確に対象疾患に含まれており、視力や視野の程度により1級から3級、障害手当金(一時金)までの認定が可能です。
厚生労働省「令和6年度 障害年金の支給状況」によると、眼の障害による障害年金受給者数は年間約2万人に上り、適切な申請により多くの方が受給されています。視覚障害の場合、視力測定や視野検査など客観的な数値で評価できるため、認定基準が比較的明確である点が特徴です。
重要なのは、単に視力が低下しているだけでなく、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズを使用した状態)がどの程度か、視野の欠損がどれほどあるか、そして日常生活や就労にどの程度の支障があるかという点です。たとえば片眼の視力が良好でも、もう片眼の視力が著しく低下している場合や、両眼の視野が狭窄している場合には、認定の対象となります。
視覚障害の原因疾患は多岐にわたります。糖尿病網膜症、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、白内障、視神経炎など、それぞれの疾患特性により視力低下や視野障害の進行パターンが異なります。いずれの疾患であっても、認定基準を満たせば障害年金の対象となります。
視覚障害の障害年金受給条件とは
視覚障害で障害年金を受給するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります(国民年金法第30条、厚生年金保険法第47条)。
1. 初診日要件
視覚障害の原因となった疾患で初めて医師の診療を受けた日(初診日)において、いずれかの年金制度に加入していることが必要です:
国民年金加入者の場合
原則、20歳以上60歳未満の日本国内居住者
厚生年金加入者の場合
会社員、公務員、私学教職員等の組合員 70歳未満で老齢年金を受給していない方
20歳前の傷病による特例
先天性の視覚障害や、20歳前に発症した疾患による視覚障害の場合、初診日要件は不要となり、20歳に達した日において障害状態にあれば障害基礎年金の対象となります(国民年金法第30条の4)。
2. 保険料納付要件
初診日の前日において、以下のいずれかを満たしていることが必要です(国民年金法第30条第1項):
原則
保険料納付済期間と免除期間を合わせて加入期間の3分の2以上
特例(令和18年4月1日前の初診日の場合)
初診日において65歳未満で、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない
3. 障害状態要件
障害認定日または現症日において、障害等級表に定める1級から3級、障害手当金(一時金)のいずれかの状態に該当することが必要です。視覚障害の場合、原則として初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日が障害認定日となります(国民年金法施行令第4条の6)。
視覚障害における障害等級の判定基準
視覚障害の障害年金における等級判定は、視力と視野の両方から総合的に評価されます(厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第7章)。
1級の判定基準
視力による判定
- 視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの
- 視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
視野による判定
- 自動視野計に基づく認定基準
両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの - ゴールドマン型視野計に基づく認定基準
両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
具体的状況
日常生活において、常時他人の介助を要する状態。文字の読み書きが困難で、新聞や本を読めない。外出時は白杖の使用と同伴者が必要。調理、洗濯、掃除等の家事全般に介助が必要。階段や段差の認識が困難で転倒のリスクが高い。
2級の判定基準
視力による判定
- 視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの
- 視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
視野による判定
- 自動視野計に基づく認定基準
両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの - ゴールドマン型視野計に基づく認定基準
両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの
具体的状況
日常生活において、時々他人の介助を要する状態。大きな文字であれば読めるが、通常の新聞は困難。慣れた場所での単独歩行は可能だが、不慣れな場所では介助が必要。細かい作業(縫い物、調理等)は困難。就労は大幅な制限が必要(拡大読書器等の支援機器必須)。
3級の判定基準(厚生年金のみ)
視力による判定
- 視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの
視野による判定
- 自動視野計に基づく認定基準
両眼開放視認点数が70点以下のもの - ゴールドマン型視野計に基づく認定基準
両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のもの
具体的状況
- 日常生活は概ね自立しているが、細かい作業や長時間の視作業に困難を伴う。
- 通常の文字は読めるが、小さい文字や長時間の読書は困難。車の運転は不可能または著しく制限される。
- 就労において視覚を主に使用する業務は困難(デスクワークでも拡大鏡等が必要)。
- 夜間や薄暗い場所での移動に困難を伴う。
障害手当金(一時金)の判定基準(厚生年金のみ)
視力による判定
- 視力の良い方の眼の視力が0.6以下のもの
- 一眼の視力が0.1以下のもの
視野による判定
自動視野計に基づく認定基準
- 両眼開放視認点数が100点以下のもの
- 両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
ゴールドマン型視野計に基づく認定基準
- Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
- 両眼による視野が2分の1以上欠損したもの
視覚障害の初診日と障害認定日について
視覚障害の障害年金申請において、初診日と障害認定日の特定は極めて重要です。
初診日の考え方
原疾患による判断 視覚障害の原因となった疾患で初めて医師の診療を受けた日が初診日となります:
糖尿病網膜症:
糖尿病で初めて受診した日(眼科の初診日ではない)
緑内障:
眼圧上昇や視神経障害を指摘された日
網膜色素変性症:
夜盲症状や視野狭窄を訴えて受診した日
加齢黄斑変性:
視力低下や歪視を訴えて受診した日
継続性の原則
同一傷病または因果関係のある傷病については、最初の医師の診療を受けた日が初診日となります。
たとえば糖尿病網膜症の場合、糖尿病の診断日が初診日となり、その後眼科を受診した日は初診日とはなりません。
健康診断での指摘
健康診断で視力低下や眼底異常を指摘され、その後医療機関を受診した場合、健康診断日が初診日となる場合があります。
ただし、健康診断で指摘される前に自覚症状があり受診していた場合は、その受診日が初診日となります。
障害認定日の特定
原則的な障害認定日
視覚障害の場合、初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日が障害認定日となります(国民年金法施行令第4条の6第1項)。
これは視覚障害が進行性の場合もあり、一定期間の経過観察が必要なためです。
具体例
初診日:令和4年6月1日
障害認定日:令和5年12月1日(1年6ヶ月経過日)
申請に必要な書類と準備すべきもの
視覚障害の障害年金申請には、以下の書類が必要です(日本年金機構「障害年金ガイド」)。
必須書類
1. 年金請求書
障害基礎年金用または障害厚生年金用 初診日の年金加入状況により使い分け
2. 診断書(眼の障害用)
障害認定日から3ヶ月以内のものまたは提出日前3ヶ月以内のもの(国民年金法施行規則第34条)
3. 受診状況等証明書
初診日を証明する書類 初診の医療機関で作成
4. 病歴・就労状況等申立書
発症から現在までの詳細な経過 日常生活や就労への影響を具体的に記載
添付書類
年金手帳または基礎年金番号通知書 振込先金融機関の通帳等 戸籍謄本または住民票(請求者と生計維持関係にある配偶者・子がいる場合)
診断書作成のポイントと医師との連携
診断書は障害年金審査における最重要書類です。視覚障害の特性を適切に反映した記載が必要です。
医師に伝えるべき情報
視機能について 医師には以下の項目について、日常生活での具体的な困難を伝えましょう:
1. 視力低下の程度:
どの程度の大きさの文字が読めるか、どの距離で人の顔が認識できるか
2. 視野障害の影響:
つまずきや衝突の頻度、階段での恐怖感、人や物の見落とし
3. 明暗順応:
明るい場所から暗い場所への移動時の困難、夜間の移動の困難
4. 色覚異常:
信号機の判別、色の区別の困難さ
5. 羞明(まぶしさ):
屋外での眩しさ、照明への過敏性
具体的な症状の伝達 医師には日常生活での具体的な制限を伝えることが重要です:
- 「新聞の文字は拡大鏡を使用しても読めず、テレビのテロップも判読できない」
- 「外出時は白杖を使用し、家族の同伴がないと不安で単独では外出できない」
- 「階段の昇降時に段差が見えず、手すりを使用しても恐怖感があり、時間がかかる」
- 「調理中に包丁で指を切ることがあり、火の取り扱いも危険なため、家族の見守りが必要」
- 「職場では拡大読書器とパソコンの画面拡大機能を使用しているが、長時間の作業は疲労が激しく困難」
診断書記載の重要ポイント
客観的検査結果の記載 視覚障害の障害年金では、以下の検査結果が重要な判断材料となります:
視力検査
- 矯正視力の測定値(右眼・左眼別)
- 測定方法(万国式試視力表、ランドルト環)
- 測定距離(通常5メートル)
- 使用した矯正レンズの度数
視野検査
- ゴールドマン視野計による8方向の視野角度
- 視野図(I/2、I/4等の視標による)
- 中心フリッカー値(必要に応じて)
- 視能率による損失率の計算
眼底所見
- 視神経乳頭の状態(陥凹、萎縮、浮腫等)
- 網膜の状態(出血、滲出、変性、剥離等)
- 黄斑部の状態(浮腫、萎縮、前膜等)
- 血管の状態(狭細、蛇行、閉塞等)
日常生活動作能力の評価
視力や視野の数値だけでなく、日常生活での具体的な支障を診断書に記載することが重要です:
読み書き能力:
新聞・本が読めるか、手書きで文字が書けるか
移動能力:
屋内・屋外での単独歩行の可否、白杖や同伴者の必要性
家事動作:
調理、洗濯、掃除等の実施可能性
就労能力:
視覚を使用する作業の可否、支援機器の必要性
病歴・就労状況等申立書の書き方
視覚障害の病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの経過と生活への影響を詳しく記載する重要な書類です。
記載すべき内容
発症から診断まで
- 初期症状の出現時期と内容(視力低下、視野狭窄、眼痛等)
- 受診のきっかけ(健康診断での指摘、自覚症状の悪化等)
- 確定診断に至るまでの検査経過
- 診断時の視力・視野の状態
治療経過
- 点眼治療の開始時期と種類
- レーザー治療や手術の実施時期
- 硝子体注射等の特殊治療
- 治療効果と視機能の変化
現在の状況
- 現在の視力・視野の状態
- 日常生活での具体的な困難
- 就労状況と職場での配慮事項
- 今後の見通しと治療方針
効果的な記載のコツ
時系列での整理
発症から現在まで時系列で整理し、重要な出来事や症状の変化を明確に記載します:
発症期(例)
「平成30年頃から夜間の見えにくさを自覚。令和元年の職場健診で視野異常を指摘され、B眼科クリニックを受診。ゴールドマン視野検査で視野狭窄を認め、網膜色素変性症と診断された」
治療期(例)
「令和2年から視力低下が進行し、矯正視力が右眼0.1、左眼0.08まで低下。視野も求心性に狭窄が進行し、両眼ともに10度以内となった。根本的治療法はなく、遮光眼鏡の使用等の対症療法のみ継続」
現在(例)
「現在は両眼の矯正視力が右眼0.06、左眼0.05で、視野も5度以内まで狭窄。日常生活において新聞は拡大鏡を使用しても判読困難。外出時は白杖を使用し、家族の同伴が必要な状態が継続している」
日常生活への具体的影響
視覚障害による日常生活制限を具体的に記載します:
読み書きの困難
「新聞や本は通常の文字サイズでは全く読めず、拡大読書器を使用しても長時間の読書は眼精疲労が激しく困難」
「手書きで文字を書く際、行がずれてしまい、郵便はがきに宛名を書くことができない」
「スマートフォンの画面は最大まで拡大し、音声読み上げ機能を併用している」
移動の困難
「屋内でも慣れない場所では壁づたいに移動し、段差につまずくことが多い」
「階段の昇降時は段差が見えず、手すりを使用し一段ずつ足で確認しながら慎重に移動している」
「外出時は白杖を使用しているが、視野が狭いため人や自転車との衝突を避けられず、家族の同伴が必須」
「夜間や薄暗い場所では全く見えず、単独での外出は不可能」
就労への影響
「事務職として勤務していたが、パソコン作業が困難となり、拡大読書器や画面拡大ソフトを使用している」
「書類の確認作業に健常者の3倍以上の時間を要し、同僚の支援を受けながら業務を行っている」
「通勤時は視野が狭く混雑した電車内での移動が困難なため、時差出勤を利用している」
「視覚障害の進行により、配置転換や就労時間の短縮を検討せざるを得ない状況」
家事動作の困難
「調理時に包丁の使用が危険で、食材を切る際は何度も手を切りそうになり、家族の見守りが必要」
「洗濯物を干す際、洗濯ばさみの位置が見えず、時間がかかり疲労が激しい」
「掃除機をかける際、障害物が見えず家具にぶつかることが多い」
申請手続きの流れと注意点
視覚障害の障害年金申請から決定までの具体的な流れをご説明します。
Step1:事前準備期間(1-2ヶ月)
医療記録の収集
- 初診医療機関での受診状況等証明書取得
- 現在通院中の医療機関での診断書作成依頼
病歴・就労状況等申立書の作成
- 発症から現在までの詳細な経過整理
- 日常生活や就労への影響の具体的記載
- 家族からの聞き取りによる客観的情報の収集
- 視覚障害による生活制限の具体例の列挙
Step2:書類提出(即日)
提出先
- 国民年金:市区町村の年金担当窓口または年金事務所
- 厚生年金:年金事務所または共済組合
提出時の注意点
- 受付印のある控えを必ず受領
- 不備書類の有無を確認
- 追加資料の提出可能性について確認
- 診断書の視力・視野の記載内容を事前確認
Step3:審査期間(3-4ヶ月)
日本年金機構または共済組合の障害年金審査医員による書面審査が実施されます。眼の障害の場合、視力や視野の数値が明確なため、審査期間は比較的標準的な3-4ヶ月程度となることが多いです。ただし、複雑な視野障害や複数の眼疾患を併発している場合は、審査期間が長引く可能性があります。
Step4:結果通知
支給決定の場合
- 年金証書と年金決定通知書が送付
- 障害認定日または提出日の翌月分から支給開始
- 初回振込は認定から1-2ヶ月後
- 遡及請求の場合は過去分がまとめて振込
不支給決定の場合
- 不支給決定通知書が送付
- 不支給理由の記載あり
- 審査請求(不服申立て)の権利あり
- 請求期限は決定を知った日の翌日から3ヶ月以内
視覚障害特有の注意点
視力と視野の測定精度
障害年金の認定において、視力や視野の測定値は極めて重要です。測定時の体調や疲労度により数値が変動する場合があるため、以下の点に注意が必要です:
測定は体調の良い日に実施
複数回測定し、通常診療での測定値に最も近い値を記録
矯正視力は適切な眼鏡・コンタクトレンズで測定
視野検査は集中力が必要なため、疲労のない状態で実施
進行性疾患の場合
網膜色素変性症や緑内障など、進行性の視覚障害の場合、以下の点が重要です:
- 障害認定日または現症日時点の視力・視野で判定される
- 認定後も定期的な現況報告が必要
- 症状悪化時は額改定請求(等級変更請求)が可能
- 将来的な悪化を見越した記録の保管が重要
認定率を上げるための対策
視覚障害の障害年金認定率を向上させるための具体的な対策をご紹介します。
医師との効果的な連携
眼科専門医の診断書取得
可能であれば、日本眼科学会認定の眼科専門医の診断書を取得することが望ましいです。
特に複雑な視野障害や複数の眼疾患を併発している場合、専門医の診断書は医学的信頼性が高く、審査において重要視されます。
継続的な医学的管理の記録
定期的な視機能評価と検査結果の蓄積が重要です:
- 視力検査の経時的変化(年1-2回以上の測定)
- 視野検査の経時的変化(年1回以上の測定)
- 眼底所見の変化(眼底写真、OCT検査)
- 治療効果の評価(点眼治療、手術等の効果)
客観的証拠の効果的活用
視機能検査の活用
視覚障害を客観的に示すために重要な検査:
視力検査
- 万国式試視力表による矯正視力測定
- 測定距離と使用レンズの記録
- 両眼開放視力の測定(日常生活での見え方に近い)
視野検査
- ゴールドマン視野計による8方向の視野角度
- 自動視野計による視野率測定
- 視野図の保存と経時的変化の記録
画像検査
- 眼底写真(網膜、視神経の状態の客観的記録)
- OCT検査(網膜の断層画像、黄斑部の状態)
- 蛍光眼底造影検査(血管の状態、循環障害の評価)
日常生活動作能力の記録
家族や介護者からの客観的な生活状況の記録:
日常生活での具体的な困難の記録(日記形式)
- 移動時の介助の必要性と頻度
- 読み書きや家事での支援の必要性
- 就労における配慮事項と業務制限の内容
書類作成の質的向上
具体性と客観性の重視
抽象的な表現を避け、具体的で客観的な記載を心がけます:
良い例
「矯正視力が両眼ともに0.06で、新聞の見出し(約10ポイント)も拡大鏡(2倍)を使用しないと判読できない。
書類作成時は拡大読書器(5倍拡大)を使用しているが、30分以上の使用で眼精疲労と頭痛が出現する」
悪い例
「視力が悪くて新聞が読みにくい」
一貫性のある記載 診断書と病歴・就労状況等申立書の整合性、時系列の一致、症状の一貫性を保つことが重要です。
医師の診断書と申請者の病歴・就労状況等申立書で矛盾する記載があると、審査に悪影響を与える可能性があります。
特に視力や視野の数値、日常生活での困難の程度については、両者で一致した内容を記載することが重要です。
専門家に依頼するメリット・デメリット
視覚障害の障害年金申請において、専門家への依頼を検討する際の判断材料をご紹介します。
専門家依頼を推奨するケース
複雑な医学的状況
- 複数の眼疾患を併発している場合(糖尿病網膜症と緑内障等)
- 視力と視野の両方に障害がある場合
- 眼科手術を複数回受けている場合
- 他の障害(内科疾患等)を併発している場合
初診日の特定が困難
- 複数の医療機関を受診し、初診日の特定が困難
- 医療機関の廃院等により記録の入手が困難
- 20歳前から視覚障害があり、初診日が不明確な場合
- 糖尿病網膜症等、原疾患と眼科受診日が異なる場合
過去の申請で不支給
- 以前の申請で不支給決定を受けた場合
- 視力や視野の数値が認定基準に近いが届かなかった場合
- 審査請求や再審査請求を検討している場合
専門家依頼のメリット
専門知識と豊富な経験
- 眼の障害の障害年金申請に関する専門的知見
- 視力・視野の認定基準の詳細な理解
- 認定されやすい診断書作成のアドバイス
- 審査の傾向を踏まえた対策立案
手続きの負担軽減
- 複雑な書類作成の支援・代行 年金事務所との折衝代行
- 視覚障害者本人の負担軽減(書類が読めない場合のサポート)
高い成功率
- 専門家の適切な指導により認定率向上
- 視力・視野の数値の適切な評価と提示
- 不支給の場合の審査請求サポート
- 将来的な等級変更請求への対応
専門家依頼のデメリット
費用負担
障害年金申請の専門家依頼には以下の費用が発生します:
相談料
- 初回相談:無料〜1万円程度
- 継続相談:5千円〜1万円程度
着手金
- 無料〜10万円程度(事務所により大きく異なる)
- 視覚障害者の場合、対面相談や訪問対応の費用が加算される場合あり
成功報酬
- 受給決定額の10〜20%程度
- 初回振込額の2ヶ月分程度が相場
- 遡及請求の場合は過去分に対する報酬も発生
依頼先選択の重要性
専門性の確認/
すべての専門家が眼の障害の障害年金申請に精通しているわけではありません。以下の点を確認することが重要です:
- 眼の障害の障害年金申請実績
- 視力・視野の認定基準に関する知識
- 医学的知識の程度(眼科疾患の理解)
信頼性の判断
- 社会保険労務士等の有資格者であること
- 過去の実績と成功率の開示
- 費用体系の明確性
- 相談時の対応の丁寧さ(視覚障害者への配慮)
自分で申請する場合の留意点
十分な準備期間の確保 視覚障害の障害年金申請は、視力や視野の数値が重要なため、十分な準備期間(2-6ヶ月程度)を確保し、制度の理解、必要書類の準備、医師との連携を丁寧に行うことが重要です。
制度の正確な理解
- 障害認定日の特定方法
- 視力・視野の認定基準の詳細
- 必要書類の内容と作成方法
- 申請から決定までの流れ
視覚障害者へのサポート体制
視覚障害により書類の作成や読み取りが困難な場合、以下のサポート体制を活用できます:
- 家族や支援者による代筆・代読
- 市区町村の障害福祉課での支援
- 視覚障害者支援センターでの相談
- パソコンの音声読み上げソフトの活用
まとめ
視覚障害による障害年金は、適切な準備と手続きにより受給可能な重要な支援制度です。
受給の可能性について
視覚障害は障害年金の明確な対象疾患であり、矯正視力や視野の程度により1級から3級、障害手当金まで幅広く認定の可能性があります。重要なのは視力だけでなく、視野障害の程度、日常生活動作能力の制限の程度です。特に矯正視力の良い方の眼の視力が0.07以下の場合は、2級以上の認定が期待できます。また、視力と視野の両方に障害がある場合は、総合的に評価されます。
客観的評価の重要性
視覚障害の場合、視力や視野の数値という客観的な指標により評価されるため、適切な検査記録の保管と提示が極めて重要です。ゴールドマン視野計による視野検査、万国式試視力表による矯正視力測定、眼底写真やOCT検査等の画像記録を継続的に保管し、経時的な変化を示すことで、認定の可能性が高まります。
成功のための重要ポイント
認定獲得の鍵となるのは、初診日の正確な特定、継続的な視機能評価の実施、眼科専門医との密な連携による適切な診断書作成、具体的で客観的な病歴・就労状況等申立書の記載、視力・視野の検査結果の効果的活用です。特に視覚障害による日常生活での具体的な困難(読み書きの困難、移動の制限、就労への影響等)を詳細に記載することが重要です。
進行性疾患への対応
網膜色素変性症や緑内障など進行性の視覚障害の場合、障害認定日または提出日時点の視機能で判定されますが、その後の症状悪化に備えて継続的な記録の保管が重要です。認定後も定期的な現況報告が必要であり、症状悪化時には額改定請求(等級変更請求)により、より高い等級への変更が可能です。早期からの適切な記録管理が、将来的な等級変更にも役立ちます。
専門家活用の価値
複雑な医学的状況、複数の眼疾患の併発、初診日特定の困難性がある場合には、専門家への依頼を検討することをお勧めします。特に視覚障害により書類の作成や読み取りが困難な場合、専門家のサポートは手続きの負担軽減に大きく寄与します。費用対効果を十分に検討した上で、眼の障害の申請実績が豊富な専門家を選択することが重要です。
視覚障害をお持ちの方やそのご家族は、一人で悩まず、まずは正しい情報収集から始めてください。現在の視力や視野の状態、日常生活での困難を丁寧に整理し、適切な支援を受けながら申請手続きを進めることで、必要な経済的支援を受けられる可能性が十分にあります。
視覚障害は客観的な数値で評価できる障害であり、適切な準備により認定率も比較的高い傾向にあります。視覚の制限による生活の質の低下と経済的負担を軽減するため、制度を有効活用していただくことを心より願っています。視覚障害という困難を抱えながらも、障害年金制度の支援により、より安心して生活できるよう、前向きに取り組まれることをお勧めいたします。
最終更新日:2025年11月12日
※本記事の情報は最終更新日時点のものです。最新の制度内容については、日本年金機構または年金事務所にご確認ください。