ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)を装着された方やそのご家族にとって、デバイス植込み後の生活や経済面での不安は大きな課題です。「ペースメーカーを入れても障害年金はもらえるのか」「ICDと障害年金の関係がわからない」「申請手続きが複雑でどこから始めればいいかわからない」「認定されるかどうか不安」といった疑問を抱える方も多いのが現状です。
この記事では、ペースメーカー・ICD装着による障害年金について、受給の可能性から具体的な申請方法、認定のポイントまで、専門家の視点から詳しく解説します。読み終える頃には、障害年金申請への明確な道筋が見えてくるはずです。
ペースメーカー・ICD装着でも障害年金は受給できるのか?
結論から申し上げると、ペースメーカーやICD装着により障害年金の受給は可能です。厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」において、ペースメーカー・ICD装着は「循環器疾患による障害」として明確に対象疾患に含まれており、装着後の身体状況により1級から3級までの認定が可能です。
厚生労働省「令和6年度 障害年金の支給状況」によると、循環器疾患による障害年金受給者数は年々増加傾向にあり、ペースメーカー・ICD装着者も適切な申請により多くの方が受給されています。これらのデバイス装着の場合、植込み手術の事実が客観的に証明しやすく、他の疾患と比較して認定率も比較的安定している傾向にあります。
重要なのは、デバイス装着後の心機能や日常生活動作能力がどの程度制限されているかという点です。ペースメーカーは主に徐脈性不整脈(脈が遅くなる病気)に対して、ICDは致命的な頻脈性不整脈(脈が速くなる病気)に対して植込まれ、それぞれ異なる特徴と生活制限があります。
たとえばペースメーカー装着者は電磁波の影響を避ける必要があり、特定の職業(電気工事、溶接作業等)や環境での就労が制限されます。ICD装着者は突然の作動(ショック)の可能性があるため、運転や高所作業等に制限が生じます。これらは日常生活や就労に大きな影響を与える要因となります。
また、ペースメーカー・ICD装着は通常、重篤な不整脈疾患に対する治療として行われるため、基礎疾患の重症度も考慮されます。洞不全症候群、房室ブロック、心室頻拍、心室細動等、原疾患により植込みに至った経緯も重要な判断材料となります。
ペースメーカー・ICD装着の障害年金受給条件とは
ペースメーカー・ICD装着で障害年金を受給するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります(国民年金法第30条、厚生年金保険法第47条)。
1. 初診日要件
不整脈疾患で初めて医師の診療を受けた日(初診日)において、いずれかの年金制度に加入していることが必要です:
国民年金加入者の場合
- 20歳以上60歳未満の日本国内居住者
- 厚生年金の被保険者でない方
厚生年金加入者の場合
- 会社員、公務員、私学教職員等の組合員
- 70歳未満で老齢年金を受給していない方
2. 保険料納付要件
初診日の前日において、以下のいずれかを満たしていることが必要です(国民年金法第30条第1項):
原則
保険料納付済期間と免除期間を合わせて加入期間の3分の2以上
特例(令和18年4月1日前の初診日の場合)
初診日において65歳未満で、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない
3. 障害状態要件
障害認定日において、障害等級表に定める1級から3級のいずれかの状態に該当することが必要です。ペースメーカー・ICD装着の場合、植込み手術施行日が障害認定日となります(国民年金法施行令第4条の6)。
ペースメーカー・ICD装着における障害等級の判定基準
ペースメーカー・ICD装着の障害年金における等級判定は、装着後の心機能、日常生活動作能力、就労能力等を総合的に評価して行われます(厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3章第4節)。
1級の判定基準
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものです:
心機能の状態
- ペースメーカー又はICD装着後も重篤な心不全症状が持続
- 安静時にも心不全症状や不整脈症状が出現
- 軽微な日常生活動作でも症状の著明な悪化
- おおむねNYHA心機能分類Ⅳ度に相当
具体的状況
- ベッド周辺での生活が主体
- 入浴、着替えに全面的な介助が必要
- 階段昇降は不可能
- 平地歩行も短距離で休息が必要
- デバイス作動により日常生活が著しく制限
検査所見例
- 左室駆出率(LVEF)30%未満
- 心胸郭比60%以上
- BNP 400pg/ml以上
2級の判定基準
身体の機能に相当程度の障害を有するもので、労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものです:
心機能の状態
- ペースメーカー又はICD装着後も中等度の心機能低下が持続
- 家庭内での軽労作で心不全症状や不整脈症状が出現
- 入浴、着替え等で時々介助を要する
- おおむねNYHA心機能分類Ⅲ度に相当
具体的状況
- 家事や軽労働は部分的に可能
- 階段昇降は手すりが必要で休息を要する
- 外出時は公共交通機関の利用が困難な場合がある
- フルタイムでの就労は困難
- 電磁波による就労制限
検査所見例
- 左室駆出率(LVEF)30~40%
- 心胸郭比55~60%
- BNP 200~400pg/ml
3級の判定基準(厚生年金のみ)
労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものです:
心機能の状態
- ペースメーカー又はICD装着により心機能は改善したが、軽度から中等度の制限が残存
- 軽労働は可能だが、それ以上の活動では症状が出現
- おおむねNYHA心機能分類Ⅱ度に相当
具体的状況
- デスクワーク等の軽労働は概ね可能
- 重いものを持つ、階段を急いで昇る等で症状出現
- 長時間の立ち仕事や肉体労働は困難
- 電磁波の影響を受ける環境での就労制限
- 運転や高所作業等の制限(ICD装着者)
ペースメーカー・ICD装着特有の考慮事項
電磁波による生活・就労制限
ペースメーカー・ICD装着者は電磁波の影響により以下の制限があります:
- 強力な電磁波を発生する機器の使用制限
- 電気工事、溶接作業等の職業制限
- MRI検査の制限(MRI対応機種を除く)
- 携帯電話等の使用時の注意
ICD特有の制限
ICD装着者には以下の特別な制限があります:
- 自動車運転の制限(作動後一定期間の運転停止)
- 高所作業、危険作業の制限
- 突然の作動による心理的ストレス
- スポーツや激しい運動の制限
定期的な医学管理の必要性
- デバイスチェック(3-6ヶ月ごと)
- バッテリー交換手術(7-10年ごと)
- 薬物療法の継続(抗不整脈薬等)
- 24時間心電図等の定期検査
不整脈疾患の初診日と障害認定日について
ペースメーカー・ICD装着の障害年金申請において、初診日と障害認定日の特定は極めて重要です。
初診日の考え方
原疾患による判断
ペースメーカー・ICD装着の原因となった不整脈疾患で初めて医師の診療を受けた日が初診日となります:
徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロック等)
症状出現により受診した日、または健康診断で異常を指摘され精査を受けた日
頻脈性不整脈(心室頻拍、心室細動等)
初回の不整脈発作で救急搬送された日
基礎心疾患に伴う不整脈
原疾患で初めて受診した日
継続性の原則
同一傷病または因果関係のある傷病については、最初の医師の診療を受けた日が初診日となります。例えば、健康診断で心電図異常を指摘された日から不整脈の診断、デバイス植込みに至るまでは一連の経過として扱われます。
突然発症の場合
心室細動等で救急搬送された場合は、その救急受診日が初診日となります。ただし、過去に心疾患の診療歴がある場合は、その時点が初診日となる可能性があります。
障害認定日の特定
ペースメーカー・ICD装着の場合
植込み手術施行日が障害認定日となります(国民年金法施行令第4条の6第1項第10号)。これはデバイス装着により永続的な身体の障害状態が確定したとみなされるためです。
具体例
- 植込み手術日:令和6年4月15日
- 障害認定日:令和6年4月15日
診断書作成時期
診断書は障害認定日から3ヶ月以内のものまたは提出日前3ヶ月以内のものが必要です(国民年金法施行規則第34条)。この期間内にデバイスチェックを行い、機能状態を確認した診断書を作成することが重要です。
申請に必要な書類と準備すべきもの
ペースメーカー・ICD装着の障害年金申請には、以下の書類が必要です(日本年金機構「障害年金ガイド」)。
必須書類
1. 年金請求書
- 障害基礎年金用または障害厚生年金用
- 初診日の年金加入状況により使い分け
2. 診断書(循環器疾患用)
- 障害認定日から3ヶ月以内のものまたは提出日前3ヶ月以内のもの
- 心電図、心エコー、胸部X線等の検査結果添付
3. 受診状況等証明書
- 初診日を証明する書類
- 初診医療機関で作成
4. 病歴・就労状況等申立書
- 発症から現在までの詳細な経過
- 日常生活や就労への影響を具体的に記載
添付書類
基本書類
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 振込先金融機関の通帳等
診断書作成のポイントと医師との連携
診断書は障害年金審査における最重要書類です。ペースメーカー・ICD装着の特性を適切に反映した記載が必要です。
医師に伝えるべき情報
心機能・不整脈について
医師には以下の項目について、デバイス装着がどのように影響しているかを具体的に伝えましょう:
1. 基礎心疾患
不整脈の原因となった心疾患の重症度
2. デバイス依存度
ペースメーカー依存の程度、ICD作動頻度
3. 運動耐容能
どの程度の活動で症状が出現するか
4. 日常生活動作
デバイス装着による制限の具体的内容
5. 就労能力
電磁波制限や突然の作動による就労への影響
具体的な症状・制限の伝達
医師には日常生活での具体的な制限を伝えることが重要です:
「電子レンジや電気毛布の使用時に、デバイスから15cm以上離れる必要があり、調理や睡眠に支障がある」
「ICD作動の可能性があるため、高所作業や運転に制限があり、従来の職業継続が困難」
「強い電磁波のある工場での勤務が不可能となり、配置転換を余儀なくされた」
「デバイスチェックのため月1回の通院が必要で、就労時間に制限がある」
診断書記載の重要ポイント
デバイス機能の詳細記載
ペースメーカー・ICD装着の障害年金では、以下の情報が重要な判断材料となります:
ペースメーカーの場合
- ペーシングモード(VVI、DDD等)
- ペーシング率(%)
- 下限レート設定
- デバイス依存度の評価
ICDの場合
- 作動回数(適切作動・不適切作動)
- ショックエネルギー設定
- 抗頻拍ペーシング機能
- 心室頻拍・心室細動の検出回数
心機能評価
- 左室駆出率(LVEF)
- 心胸郭比
- BNP またはNT-proBNP値
- NYHA心機能分類
電磁波制限の具体的記載
日常生活や就労における電磁波制限の具体的内容:
- 使用制限のある機器・環境
- 就労可能な職種の制限
- 生活上の注意事項
病歴・就労状況等申立書の書き方
ペースメーカー・ICD装着の病歴・就労状況等申立書は、発症から植込み、現在までの経過と生活への影響を詳しく記載する重要な書類です。
記載すべき内容
発症から診断まで
- 初期症状の出現時期と内容(めまい、失神、動悸等)
- 受診のきっかけ(健康診断での指摘、救急搬送等)
- 確定診断に至るまでの検査経過
- 診断時の不整脈の重症度と危険性
植込み決定から実施まで
- デバイス植込み適応となった根拠
- 植込み前の症状と生活制限
- 手術に関する説明と同意の経過
- 植込み日と使用したデバイスの種類
植込み後の経過
- 手術直後の経過と合併症の有無
- デバイス設定の調整経過
- 退院後の生活指導と制限事項
- 現在のデバイス機能と症状の状況
効果的な記載のコツ
時系列での整理
発症から現在まで時系列で整理し、重要な出来事や症状の変化を明確に記載します:
発症期(例)
「令和3年頃から階段昇降時のめまいを自覚。令和6年に職場で失神発作を起こし、救急搬送。心電図で完全房室ブロックと診断された」
植込み期(例)
「令和6年6月、症状進行により恒久的ペースメーカー植込み術(DDD)を施行。術後ペーシング率95%で、ペースメーカー依存状態となった」
現在(例)
「現在も3ヶ月ごとのデバイスチェックが必要。電磁波の影響により、従来の電気工事の仕事は継続困難となり、事務職に配置転換された」
日常生活への具体的影響
ペースメーカー・ICD装着後の日常生活制限を具体的に記載します:
電磁波による制限
「電子レンジ使用時は15cm以上離れる必要があり、調理に時間がかかるようになった」
「電気毛布や電磁調理器の使用を避けており、冬季の暖房や調理方法に制限がある」
「携帯電話は反対側の耳で使用し、胸ポケットに入れることができない」
就労への影響
「強い電磁波を発生する溶接作業から配置転換され、収入が減少した」
「ICD作動の可能性があるため、高所作業や運転業務から外された」
「デバイスチェックのため月1回の通院が必要で、有給休暇を使用している」
心理的・社会的影響
「ICD作動への不安から、一人での外出を避けるようになった」
「突然の作動を恐れて、運動や趣味活動を制限している」
「家族に負担をかけることへの心理的ストレスが大きい」
申請手続きの流れと注意点
ペースメーカー・ICD装着の障害年金申請から決定までの具体的な流れをご説明します。
Step1:事前準備期間(1-2ヶ月)
医療記録の収集
- 初診医療機関での受診状況等証明書取得
- 植込み施行医療機関での診断書作成依頼
- 術前の心電図や検査結果の収集
申立書の作成
- 発症から現在までの詳細な経過整理
- 日常生活や就労への影響の具体的記載
- 家族からの聞き取りによる客観的情報の収集
Step2:書類提出(即日)
提出先
- 国民年金:市区町村の年金担当窓口または年金事務所
- 厚生年金:年金事務所または共済組合
提出時の注意点
- 受付印のある控えを必ず受領
- 不備書類の有無を確認
- 追加資料の提出可能性について確認
Step3:審査期間(3-4ヶ月)
日本年金機構または共済組合の障害年金審査医員による書面審査が実施されます。循環器疾患の場合、専門的な医学的判断が必要なため、審査期間は標準的な3-4ヶ月程度となることが多いです。
Step4:結果通知
支給決定の場合
- 年金証書と年金支払通知書が送付
- 障害認定日または提出日の翌月分から支給開始
- 初回振込は認定から1-2ヶ月後
不支給決定の場合
- 不支給決定通知書が送付
- 審査請求(不服申立て)の権利あり
- 請求期限は決定を知った日の翌日から3ヶ月以内
ペースメーカー・ICD装着特有の注意点
障害認定日請求と事後重症請求
ペースメーカー・ICD装着の場合、植込み日が障害認定日となるため、通常は障害認定日請求となります。
定期的な現況報告
障害年金受給決定後も、1-5年ごとに障害状態確認届(診断書)の提出が必要です。ペースメーカー・ICD装着者の場合、デバイス機能や心機能の変化、バッテリー交換の状況等を継続的に報告する必要があります。
認定率を上げるための対策
ペースメーカー・ICD装着の障害年金認定率を向上させるための具体的な対策をご紹介します。
医師との効果的な連携
循環器専門医・不整脈専門医の診断書取得
可能であれば、循環器疾患や不整脈を専門とする医師(循環器内科医、不整脈専門医等)の診断書を取得することが望ましいです。専門医の診断書は医学的信頼性が高く、審査において重要視されます。
継続的なデバイス管理の記録
定期的なデバイスチェックと機能評価の記録が重要です:
- デバイス作動記録の経時的変化
- ペーシング率やバッテリー残量の推移
- プログラミング変更の理由と効果
- 合併症や不具合の有無
客観的証拠の効果的活用
デバイス機能の詳細記録
ペースメーカー・ICD装着後の機能を客観的に示すために重要な記録:
ペースメーカーの場合
- ペーシング率の継続的記録
- 閾値測定結果
- 電池消耗状況
- センシング機能の評価
ICDの場合
- 作動記録(適切作動・不適切作動の回数)
- 検出された不整脈の記録
- ショック作動時の状況記録
- 抗頻拍ペーシングの効果
生活制限の客観的記録
家族や職場からの客観的な生活状況の記録:
- 電磁波制限による具体的な生活制限
- 就労内容の変更や制限の記録
- 外出や社会参加の制限状況
- 心理的影響や不安の程度
書類作成の質的向上
具体性と客観性の重視
抽象的な表現を避け、具体的で客観的な記載を心がけます:
良い例
「ペースメーカー植込み後、電気工事作業(高圧電流を扱う業務)が不可能となり、事務職に配置転換。月収が15万円から12万円に減少した」
悪い例
「仕事に制限がある」
一貫性のある記載
診断書と申立書の整合性、時系列の一致、症状や制限の一貫性を保つことが重要です。医師の診断書と申請者の申立書で矛盾する記載があると、審査に悪影響を与える可能性があります。
専門家に依頼するメリット・デメリット
ペースメーカー・ICD装着の障害年金申請において、専門家への依頼を検討する際の判断材料をご紹介します。
専門家依頼を推奨するケース
複雑な医学的状況
- 複数回のデバイス植込み・交換歴がある場合
- 他の循環器疾患を併存している場合
- CRT-P(心臓再同期療法ペースメーカー)やCRT-D(心臓再同期療法除細動器)を装着している場合
- 植込み後の合併症や不具合により症状が複雑化している場合
初診日の特定が困難
- 複数の医療機関を受診し、初診日の特定が困難
- 医療機関の廃院等により記録の入手が困難
- 突然の救急搬送で初診医療機関の特定が困難
- 先天性心疾患で乳幼児期からの長期経過がある場合
過去の申請で不支給
- 以前の申請で不支給決定を受けた場合
- 審査請求や再審査請求を検討している場合
- 他の疾患での申請経験があるが認定されなかった場合
専門家依頼のメリット
専門知識と豊富な経験
- 循環器疾患・不整脈疾患の障害年金申請に関する専門的知見
- ペースメーカー・ICD装着特有の認定ポイントの理解
- 認定されやすい診断書作成のアドバイス
- 審査の傾向を踏まえた対策立案
手続きの負担軽減
- 複雑な書類作成の支援・代行
- 医療機関との連携サポート
- 年金事務所との折衝代行
- 家族の精神的・時間的負担の軽減
高い成功率
- 専門家の適切な指導により認定率向上
- 不支給の場合の審査請求サポート
- 長期的な年金受給の最適化
- 等級変更請求等の適切なタイミング判断
専門家依頼のデメリット
費用負担
ペースメーカー・ICD装着の障害年金申請の専門家依頼には以下の費用が発生します:
相談料
- 初回相談:無料〜1万円程度
- 継続相談:5千円〜1万円程度
着手金
- 無料〜5万円程度(事務所により大きく異なる)
成功報酬
- 受給決定額の10〜20%程度
- 初回振込額の2ヶ月分程度が相場
依頼先選択の重要性
専門性の確認
すべての専門家が循環器疾患・不整脈疾患の障害年金申請に精通しているわけではありません。以下の点を確認することが重要です:
- 循環器疾患の障害年金申請実績
- ペースメーカー・ICD装着事例の取扱い経験
- 医学的知識の程度(デバイス機能、電磁波制限等)
- 医療機関との連携体制
信頼性の判断
- 社会保険労務士等の有資格者であること
- 過去の実績と成功率の開示
- 費用体系の明確性
- 相談時の対応の丁寧さ
- 医学的知識の正確性
自分で申請する場合の留意点
十分な準備期間の確保
ペースメーカー・ICD装着の障害年金申請は専門性が高いため、十分な準備期間(2-4ヶ月程度)を確保し、制度の理解、必要書類の準備、医師との連携を丁寧に行うことが重要です。
制度の正確な理解
- 障害認定日の特定方法
- 循環器疾患・不整脈の認定基準
- 必要書類の内容と作成方法
- 申請から決定までの流れ
- デバイス特有の制限事項の理解
医学的知識の習得
- ペースメーカー・ICDの基本的な機能
- 電磁波による影響と制限事項
- デバイスチェックの意味と重要性
- 不整脈疾患の基礎知識
まとめ
ペースメーカー・ICD装着による障害年金は、適切な準備と手続きにより受給可能な重要な支援制度です。
受給の可能性について
ペースメーカー・ICD装着は障害年金の明確な対象疾患であり、装着後の心機能と日常生活への影響の程度により1級から3級まで幅広く認定の可能性があります。重要なのはデバイスの種類だけでなく、装着後の心機能、不整脈の制御状況、日常生活動作能力の制限の程度です。特に電磁波による就労制限やICD作動による生活制限は重要な評価要素となります。
障害認定日の特例活用
ペースメーカー・ICD装着の場合、植込み手術施行日が障害認定日となる特例があります。この制度により、植込み後比較的早期に申請が可能となり、認定されれば障害認定日の翌月から年金の支給が開始されます。ただし、診断書は障害認定日以降3ヶ月以内の現症である必要があるため、適切なタイミングでのデバイスチェックと診断書作成が重要です。
成功のための重要ポイント
認定獲得の鍵となるのは、植込み記録を含む詳細な医療記録の収集、継続的なデバイス機能評価の実施、循環器専門医・不整脈専門医との密な連携による適切な診断書作成、具体的で客観的な申立書の記載、NYHA心機能分類や各種検査結果の効果的活用です。特にデバイス装着後の電磁波制限による就労への影響や、ICD作動による日常生活への制約を具体的に示すことが重要となります。
専門家活用の価値
複雑な医学的状況、複数回の植込み・交換歴、初診日特定の困難性、CRT等の高度なデバイス装着がある場合には、専門家への依頼を検討することをお勧めします。特に不整脈疾患とデバイス治療は高度に専門化された分野であり、医学的知識と障害年金制度の両方に精通した専門家の支援が認定率向上に大きく寄与します。費用対効果を十分に検討した上で、信頼できる専門家を選択することが重要です。
継続的な管理の重要性
ペースメーカー・ICD装着者は、障害年金受給後も定期的な現況報告が必要です。デバイス機能の変化、バッテリー交換の状況、心機能の変化、日常生活動作能力の変化等を継続的に記録し、適切に報告することで、長期的な年金受給の継続が可能となります。また、症状の悪化や新たな合併症の出現、デバイス関連の問題発生時には、等級変更請求等の手続きも検討できます。
社会復帰への支援
ペースメーカー・ICD装着は、適切な管理により多くの方が社会復帰を果たしています。障害年金は治療期間中や就労制限がある期間の経済的支援として活用し、可能な範囲での社会参加や就労を目指すことが重要です。電磁波制限等により従来の職業継続が困難な場合でも、適切な職業選択や職場環境の調整により、充実した社会生活を送ることが可能です。
ペースメーカーやICDを装着された方やそのご家族は、一人で悩まず、まずは正しい情報収集から始めてください。装着後の心機能やデバイス機能、生活状況を丁寧に整理し、適切な支援を受けながら申請手続きを進めることで、必要な経済的支援を受けられる可能性が十分にあります。
デバイス装着は客観的に証明しやすい医学的事実であり、適切な準備により認定率も比較的高い傾向にあります。植込み手術という大きな決断をされた皆様が、障害年金制度の支援により、より安心して療養生活や社会復帰を実現できるよう、制度を有効活用していただくことを心より願っています。生命を守るためのデバイスと共に歩む新しい人生において、経済的な不安を軽減し、前向きに治療と生活に取り組まれることをお勧めいたします。
※本記事の情報は最終更新日時点のものです。最新の制度内容については、日本年金機構または年金事務所にご確認ください。