障害年金受給者のトライアル雇用制度|お試し就労のメリットと申込方法

障害年金を受給していても「働きたい」「社会とつながりたい」という思いを持つ方は多いのではないでしょうか。しかし、「自分の障害に合った仕事があるだろうか」「長続きするかどうか不安」「いきなり就職するのはハードルが高い」といった悩みも少なくありません。そんな方におすすめなのが「トライアル雇用制度」です。

この制度は、障害年金受給者を含む障害のある方が、実際の職場で一定期間「お試し就労」ができる仕組みです。本記事では、障害年金受給者がトライアル雇用制度を活用するメリット、申込方法、注意点まで、わかりやすく解説します。まずは「お試し」から始めることで、自分に合った働き方を見つけるきっかけにしていただければ幸いです。

トライアル雇用制度とは?障害年金受給者が知っておくべき基本情報

トライアル雇用制度は、障害のある方を対象に、一定期間(原則3か月間)の「お試し雇用」を実施する制度です。この制度は厚生労働省が推進する就労支援策の一つで、「障害者トライアル雇用」と呼ばれています。

トライアル雇用の概要

トライアル雇用では、企業と障害のある方が雇用契約(有期雇用契約)を結び、実際の職場で働きます。期間は原則として3か月間ですが、精神障害や発達障害のある方の場合は最長12か月まで延長できる「障害者短時間トライアル雇用」も用意されています。

雇用条件は、週20時間以上の勤務が基本とされ、賃金は労働時間や業務内容に応じて事業主が設定します。多くの場合、最低賃金以上の給与が支払われます。

トライアル雇用を実施する企業には、対象者1人につき月額最大4万円(短時間トライアル雇用の場合は最大2万円)の奨励金が支給されます。この奨励金が企業側のメリットにもなっています。

障害年金受給者とトライアル雇用の関係

障害年金を受給している方も、トライアル雇用制度を利用することができます。実際、多くの障害年金受給者がこの制度を活用して就労への第一歩を踏み出しています。

重要なポイントとして、トライアル雇用は「試行的な雇用」であるため、就労状況によって直ちに障害年金の受給資格に影響が出ることは少ないとされています。ただし、後述するように、長期的には就労状況が障害状態の判断材料となる可能性はあるため、注意が必要です。

トライアル雇用制度は、障害年金受給者にとって「いきなり就職するのではなく、まずは試してみる」という選択肢を提供してくれる貴重な制度と言えるでしょう。

障害年金受給者がトライアル雇用を利用するメリット

障害年金受給者がトライアル雇用制度を利用するメリットは多岐にわたります。具体的に見ていきましょう。

リスクの少ない形で就労体験ができる

トライアル雇用の最大のメリットは、「試行的」という性質です。3か月という限られた期間で、自分の障害特性と仕事の相性を確かめることができます。「体力的に続けられるか」「通勤は大丈夫か」「職場環境は自分に合っているか」など、実際に働いてみないとわからないことを確認できる貴重な機会です。

もし合わないと感じた場合でも、期間満了で終了することができるため、心理的なハードルが低いのも大きな特徴です。通常の就職では「すぐに辞めるわけにはいかない」というプレッシャーがありますが、トライアル雇用ではそうした心配が軽減されます。

ある精神障害のある方は、「最初から正社員で就職するのは不安だったが、トライアル雇用なら『お試し』という気持ちで挑戦できた」と話しています。

自分の適性や必要な配慮を知る機会になる

トライアル雇用を通じて、自分の強みや弱み、必要な配慮を具体的に把握することができます。実際の職場で働くことで、「予想以上にできること」や「想定外の困難」が見えてくることがあります。

例えば、ある発達障害のある方は、トライアル雇用を通じて「指示は口頭だけでなく文書でもらうと理解しやすい」「静かな環境だと集中力が上がる」といった自分に必要な配慮を具体的に把握できたと言います。この経験は、その後の就職活動や職場での配慮依頼にも活かされています。

このように自己理解が深まることは、長期的なキャリア形成にとって非常に重要です。

企業側も障害特性を理解できる期間になる

トライアル雇用は、障害のある方だけでなく、雇用する企業側にとっても「試行期間」となります。企業は実際に働く姿を見ることで、障害特性への理解を深め、適切な配慮や環境調整を検討することができます。

例えば、ある身体障害のある方のケースでは、トライアル期間中に企業がデスクの高さや作業工程の調整を行い、より働きやすい環境を整えることができました。このような相互理解がないまま正規雇用を始めると、ミスマッチが生じる可能性が高くなります。

トライアル雇用を通じて、企業側が障害特性を正確に理解し、適切な対応を学ぶことで、その後の長期的な雇用関係の土台が築かれるのです。

正規雇用への足がかりになる可能性が高い

トライアル雇用の大きな目的の一つは、その後の正規雇用につなげることです。厚生労働省の統計によると、トライアル雇用終了者の約8割が継続雇用に移行しているというデータもあります。

トライアル雇用を通じて、企業と障害のある方の間に信頼関係が築かれ、「この人なら戦力になる」「この会社なら長く働ける」という相互の確信が生まれることで、正規雇用への移行がスムーズになります。

障害年金を受給しながら、まずはトライアル雇用で働き始め、徐々に自信をつけて正規雇用に移行するというステップアップは、多くの方にとって現実的な選択肢と言えるでしょう。

トライアル雇用中の障害年金はどうなる?

障害年金受給者がトライアル雇用を利用する際に最も気になるのが、「年金への影響」ではないでしょうか。この点について詳しく解説します。

基本的に収入による直接減額はない

結論から言うと、障害年金は基本的に収入額によって直接減額されることはありません(20歳前傷病による障害基礎年金で高所得の場合を除く)。つまり、トライアル雇用で得た収入の額だけを理由に年金が減ることはないのです。

これは多くの方が誤解している点ですが、障害年金は「働けないから支給される」のではなく、「一定の障害状態にある」ことを要件としています。したがって、障害状態が継続していれば、収入の多寡にかかわらず受給できるケースが多いのです。

トライアル雇用で月に10万円の収入があっても、それだけを理由に障害年金が減額されることはありません。両方の収入を受け取ることができるので、経済的にも安心です。

短期間の就労は障害状態の判断に大きく影響しない

トライアル雇用は原則3か月という短期間であるため、このような短期間の就労経験が直ちに「障害状態の改善」と判断されることは少ないとされています。

障害年金の等級見直しは、定期的な診断書の提出時(初回認定から1~2年後、その後は2~5年ごと)に行われますが、その際の判断材料は「安定した就労が継続できているか」という点が重視されます。3か月程度の試行的な就労は、通常、障害状態が改善したとみなされるほどの「安定した就労」とは判断されにくいと考えられています。

ただし、トライアル雇用終了後に正規雇用に移行し、長期間安定して就労を続けた場合は、次回の診断書提出時に障害状態の再評価が行われる可能性があります。特にフルタイム勤務の場合はその可能性が高まります。

診断書提出時の対応ポイント

トライアル雇用を経験した後、診断書を提出する際には以下の点に注意しましょう:

1.就労状況を正確に伝える

トライアル雇用の期間、勤務時間、職場での配慮内容などを主治医に詳しく伝えましょう。特に「配慮された環境でなら部分的に就労可能」という状態であることを強調することが重要です。

2.主治医との信頼関係

普段から主治医とは良好なコミュニケーションを心がけ、就労への挑戦について理解を得ておくことが大切です。

3.就労以外の日常生活の状況も伝える

診断書には就労状況だけでなく、日常生活における困難さも記載されます。就労以外の場面での症状や困難について具体的に伝えることも重要です。

これらの点に注意することで、トライアル雇用が障害年金に与える影響を最小限に抑えることができるでしょう。

トライアル雇用の申込方法と利用の流れ

トライアル雇用を利用するための具体的な申込方法と流れを解説します。

トライアル雇用の利用条件

トライアル雇用を利用するには、以下の条件を満たす必要があります:

1.障害者手帳の所持

身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳のいずれかを持っているか、または障害者雇用促進法に規定する障害者であること。

2.ハローワークへの求職登録

ハローワークに求職登録をしていること。

3.トライアル雇用を希望すること

本人がトライアル雇用による就労を希望していること。

障害年金受給者の場合、上記の条件を満たしていれば、基本的にトライアル雇用を利用することができます。

申込の手順

トライアル雇用の申込手順は以下の通りです:

1.ハローワークで求職登録

まずはお住まいの地域を管轄するハローワークに行き、求職登録を行います。その際、障害者手帳を持参し、「障害者トライアル雇用を希望している」旨を伝えましょう。

2.障害者窓口での相談

ハローワーク内の障害者専門窓口で、担当者に相談します。自分の障害特性や希望する仕事内容、勤務条件などを具体的に伝えることが大切です。

3.トライアル雇用求人の紹介

担当者から、トライアル雇用が可能な求人を紹介してもらいます。自分の希望や条件に合う求人を探しましょう。

4.応募と面接

興味のある求人に応募し、面接を受けます。面接では、自分の強みや希望する配慮などを伝えると良いでしょう。

5.雇用契約の締結

採用が決まれば、企業とトライアル雇用契約を結びます。契約書には、雇用期間、勤務時間、賃金などの条件が明記されます。

このような流れで、トライアル雇用がスタートします。

関連機関のサポート

トライアル雇用を円滑に進めるために、以下の機関のサポートを受けることもできます:

1.障害者就業・生活支援センター

就労だけでなく生活面も含めた総合的な支援を行う機関です。ハローワークと連携して、トライアル雇用のサポートも行っています。

2.地域障害者職業センター

ジョブコーチによる支援や職場適応支援など専門的なサポートを受けられます。トライアル雇用中の職場適応をスムーズにするために活用できます。

3.就労移行支援事業所

民間の就労支援サービスで、ビジネスマナーやパソコンスキルなどの訓練を受けながら、トライアル雇用先の紹介を受けることもできます。

これらの機関と連携することで、より充実したサポートを受けながらトライアル雇用に臨むことができます。

障害種別ごとのトライアル雇用活用ポイント

障害の種類によって、トライアル雇用の活用ポイントは異なります。それぞれの特性に合わせたアドバイスを紹介します。

身体障害の場合

身体障害のある方がトライアル雇用を活用する際のポイントは以下の通りです:

1.職場環境のバリアフリー状況の確認

トライアル雇用前に、職場のバリアフリー状況や必要な設備について確認しましょう。必要であれば、見学時に具体的な配慮を依頼することも大切です。

2.通勤手段と通勤時間の検討

通勤に負担がかかると長期的な就労が難しくなります。通勤ルートの確認や必要に応じて時差通勤の相談をしましょう。

3.作業環境の調整依頼

デスクの高さ、作業工程、補助具の使用など、具体的な配慮事項をリストアップし、企業に伝えることが重要です。

身体障害の場合、物理的な環境調整が適切に行われれば、長期的な就労につながりやすい傾向があります。トライアル期間中に必要な配慮を明確にし、本採用後の環境整備につなげましょう。

精神障害の場合

精神障害のある方がトライアル雇用を活用する際のポイントは以下の通りです:

1.勤務時間と業務量の調整

フルタイムではなく、短時間から始めることができる「障害者短時間トライアル雇用」の活用を検討しましょう。徐々に時間を延ばしていく方法が効果的です。

2.体調管理とストレス対策

トライアル期間中は特に体調の変化に注意し、無理をしないことが大切です。必要に応じて休憩を取ることやストレス対処法を事前に考えておくことも有効です。

3.コミュニケーション方法の確立

不安や困りごとをどのように伝えるか、誰に相談するかなど、コミュニケーション方法を事前に確認しておくと安心です。

精神障害の場合、環境的な配慮に加えて、「無理のないペース」を守ることが長期的な就労成功の鍵となります。トライアル期間を通じて、自分にとって無理のない働き方を見つけることを意識しましょう。

発達障害・知的障害の場合

発達障害・知的障害のある方がトライアル雇用を活用する際のポイントは以下の通りです:

1.業務内容の明確化

具体的にどのような作業をするのか、手順書やマニュアルがあるのかなど、業務内容を明確にしてもらうことが重要です。

2.指示・伝達方法の工夫

口頭だけでなく、文書やイラストなど、自分が理解しやすい方法で指示を受けられるよう依頼しましょう。

3.ジョブコーチなどの支援者の活用

特に初期段階では、ジョブコーチなどの専門的な支援者に同行してもらうことで、スムーズな職場適応が期待できます。

発達障害・知的障害の場合、「わかりやすさ」と「予測可能性」が重要です。トライアル期間中に自分に合った業務の進め方や環境を見つけ、それを本採用後にも継続できるようにすることが成功への近道です。

トライアル雇用から正規雇用への移行成功事例

実際にトライアル雇用を経て正規雇用に移行した方々の事例を紹介します。

精神障害のある30代男性のケース

Aさん(30代・男性)は、うつ病とパニック障害で障害基礎年金2級を受給していました。病状が安定してきたため、「少しずつ社会復帰したい」と考え、ハローワークの障害者窓口に相談しました。

紹介されたのは、事務用品メーカーの一般事務職のトライアル雇用でした。週20時間、1日4時間の勤務からスタートし、データ入力や書類整理などの業務を担当しました。

トライアル期間中は、以下の点に特に注意して取り組みました:

  1. 体調管理を最優先し、無理をしないこと
  2. 困ったことはすぐに担当者に相談すること
  3. 業務の優先順位を明確にしてもらうこと

3か月間のトライアル期間を通じて、Aさんは徐々に職場環境に慣れ、業務にも自信が持てるようになりました。企業側も「正確な仕事ぶり」を評価し、トライアル終了後は週30時間の契約社員として採用されました。

現在もAさんは障害年金を受給しながら働いています。「障害年金があることで無理せず働けるのがありがたい。トライアル雇用のおかげで自分のペースを見つけられた」と話しています。

身体障害のある40代女性のケース

Bさん(40代・女性)は、交通事故による脊髄損傷で車いすを使用しており、障害厚生年金2級を受給していました。長年専業主婦をしていましたが、「自分も社会に貢献したい」という思いから就労を考え始めました。

ハローワークを通じて紹介されたのは、保険会社のコールセンター業務のトライアル雇用でした。週30時間、在宅勤務中心の働き方で、顧客からの問い合わせ対応を担当しました。

トライアル期間中は、以下の点に特に注意して取り組みました:

  1. 在宅勤務環境の整備(デスクや機材の配置など)
  2. 電話応対スキルの習得
  3. システム操作の習熟

3か月間のトライアル期間を通じて、Bさんは業務に必要なスキルを着実に身につけました。顧客対応の丁寧さが評価され、トライアル終了後は正社員として採用されました。在宅勤務中心という働き方は、身体的な負担を抑えながら働ける理想的な形態でした。

現在もBさんは障害年金を受給しながら働いています。「トライアル雇用がなければ、いきなり正社員として応募する勇気はなかった。まずは試せる制度があって本当に良かった」と振り返っています。

発達障害のある20代男性のケース

Cさん(20代・男性)は、自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症があり、障害基礎年金2級を受給していました。コンピュータに強い関心があり、プログラミングを独学で学んでいましたが、コミュニケーションの難しさから就職に不安を感じていました。

就労移行支援事業所の支援を受けながら、ITベンチャー企業のプログラマー補助のトライアル雇用に挑戦しました。週20時間、テストコードの作成や簡単なプログラミング業務を担当し、徐々に業務範囲を広げていきました。

トライアル期間中は、以下の点に特に注意して取り組みました:

  1. 業務指示は文書やチャットで受けるようにすること
  2. 感覚過敏に配慮して静かな環境で作業すること
  3. 曖昧な指示があった場合は必ず確認すること

3か月間のトライアル期間を通じて、Cさんは自分の強み(論理的思考力とコーディングスキル)を発揮できる環境が整いました。企業側も「特定分野での高い能力」を評価し、トライアル終了後は週30時間の契約社員として採用され、さらに1年後には正社員に登用されました。

現在もCさんは障害年金を受給しながら働いています。「トライアル期間中に自分に必要な配慮を具体的に伝えられたことが、その後の長期的な就労につながっている」と実感しています。

トライアル雇用利用時の注意点と対処法

トライアル雇用を有効に活用するためには、いくつかの注意点を知っておくことが大切です。

無理をしないペース配分を意識する

トライアル雇用は「試行」の期間です。この期間に無理をして体調を崩してしまっては、本来の目的が達成できません。特に初めての就労や久しぶりの就労の場合は、体力的・精神的な負担が予想以上に大きいことがあります。

以下のポイントを意識しましょう:

1.徐々に慣れていく

最初から100%のパフォーマンスを目指さず、徐々に慣れていくことを意識しましょう。

2.体調管理を優先

少しでも体調に異変を感じたら休憩を取る、必要なら休むなど自己管理を徹底しましょう。

3.達成可能な目標設定

日々の業務量や目標は、達成可能な範囲で設定するよう心がけましょう。

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無理をして短期間で燃え尽きるよりも、持続可能なペースで長く働き続けることが大切です。

企業とのコミュニケーションを大切にする

トライアル雇用の成功には、企業側との良好なコミュニケーションが欠かせません。自分の障害特性や必要な配慮を適切に伝えることで、互いの理解が深まります。

以下のポイントを意識しましょう:

1.困ったことはすぐに相談

小さな困りごとでも、溜め込まずに早めに相談することが重要です。

2.具体的な配慮を伝える

「集中できない」と言うだけでなく、「パーテーションがあると集中できる」など、具体的な対策を提案すると理解されやすいです。

3.良かった点も伝える

困りごとだけでなく、「この環境だと作業しやすい」などポジティブなフィードバックも伝えましょう。

トライアル期間中のコミュニケーションが、その後の長期的な雇用関係の土台となります。

支援機関の活用

トライアル雇用中に困ったことがあれば、一人で抱え込まず、様々な支援機関を活用しましょう。

以下の支援機関が役立ちます:

1. ハローワークの障害者担当者

トライアル雇用に関する様々な相談に応じてくれます。

2. ジョブコーチ

職場での具体的な支援や企業との調整役を担ってくれます。

3. 障害者就業・生活支援センター

就労面だけでなく生活面の相談にも対応してくれます。

特に問題が生じた際には、ハローワークの担当者に早めに相談することで、適切な対応策を見つけやすくなります。

よくある質問と回答

障害年金受給者のトライアル雇用に関する、よくある質問と回答をまとめました。

  • トライアル雇用中の給与はいくらくらいもらえますか?

    トライアル雇用中の給与は、労働時間や業務内容によって企業が設定します。最低賃金以上が保障されており、一般的には週20時間勤務で月に8万円前後、週30時間勤務で月に12万円前後というケースが多いようです。地域や業種、企業によって差があるため、応募前に条件を確認することをお勧めします。また、障害年金との併給も可能なので、両方の収入を合わせた金額が実質的な月収となります。

  • トライアル雇用を利用すると障害年金が打ち切られる可能性はありますか?

    トライアル雇用を利用すること自体が直ちに障害年金の支給停止理由になることはありません。3か月程度の短期間の就労経験が「障害状態の改善」と判断される可能性は低いとされています。ただし、トライアル雇用後に正規雇用に移行し、長期間安定して働けるようになった場合は、次回の診断書提出時に障害状態の再評価が行われる可能性があります。その際は、職場での配慮内容なども含めて、正確に状況を伝えることが大切です。

  • 障害者手帳を持っていないのですが、トライアル雇用は利用できますか?

    基本的にはハローワークで障害者として求職登録する必要があるため、何らかの障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)を持っているか、医師の診断書等で障害者雇用促進法上の障害者と確認できることが条件です。障害年金を受給していても、障害者手帳がない場合は、まずはハローワークの障害者窓口に相談してみることをお勧めします。医師の診断書など障害を証明する書類があれば対応してもらえる場合があります。

  • トライアル雇用が終わった後、必ず正規雇用にならなければいけませんか?

    いいえ、トライアル雇用後に必ず正規雇用に移行しなければならないということはありません。トライアル雇用の目的は「相互理解」なので、企業側または本人が「合わない」と判断した場合は、期間満了で終了することも可能です。ただし、多くの企業はトライアル雇用をきっかけに正規雇用につなげたいと考えているため、双方が納得すれば継続雇用になるケースが一般的です。その際の雇用形態(正社員、契約社員、パートなど)や条件は企業によって異なります。

まとめ:障害年金受給者の新たな一歩をサポートするトライアル雇用

障害年金受給者のトライアル雇用制度について、主なポイントをまとめます:

1.トライアル雇用制度は「お試し就労」の機会

  • 原則3か月間、実際の職場で働く経験ができる
  • 障害特性と仕事の相性を確かめられる
  • リスクが少ない形で就労にチャレンジできる

2.障害年金受給者にとってのメリット

  • 障害年金を受給しながら就労収入も得られる
  • 短期間の就労は年金受給資格に直ちに影響しにくい
  • 自分の適性や必要な配慮を知る機会になる
  • 企業側の理解も深まり、継続雇用につながりやすい

3.申込方法と利用の流れ

  • ハローワークでの求職登録が第一歩
  • 障害者専門窓口での相談が重要
  • 支援機関と連携することでスムーズに進められる

4.障害種別に合わせた活用のコツ

  • 身体障害:環境整備と通勤手段の確認
  • 精神障害:無理のないペース設定と体調管理
  • 発達障害・知的障害:指示方法の明確化と支援者の活用

5.成功のためのポイント

  • 無理をしないペース配分
  • 企業との良好なコミュニケーション
  • 支援機関の積極的な活用

トライアル雇用制度は、障害年金受給者にとって就労への第一歩を踏み出す貴重な機会です。「いきなり就職するのは不安」「自分に合った仕事があるか分からない」という方こそ、まずは「お試し」から始めてみることをお勧めします。

障害があっても、適切な環境と配慮があれば、能力を発揮して働くことは十分に可能です。トライアル雇用を足がかりに、障害年金と就労収入を組み合わせた、経済的にも精神的にも豊かな生活を目指してみませんか?

不安や疑問がある場合は、まずはハローワークの障害者窓口や障害者就業・生活支援センターに相談してみることをお勧めします。あなたの一歩を支える専門家がいることを忘れないでください。