「障害者総合支援法のサービスと障害年金、どちらも利用できるの?」「どのサービスが自分に合っているのだろう?」「申請手続きは難しいの?」多くの方がこうした疑問や不安を抱えているのではないでしょうか。障害者総合支援法に基づくサービスと障害年金は、どちらも障害のある方の生活を支える重要な制度ですが、それぞれの仕組みや利用方法を正確に理解している方は多くありません。
この記事では、障害者総合支援法のサービス内容から障害年金との効果的な組み合わせ方、具体的な申請手続きまで、専門家の視点からわかりやすく解説します。両制度を上手に活用することで、より充実した生活を送るためのヒントをお届けします。
障害者総合支援法と障害年金の基本
障害のある方の生活を支える二大制度である「障害者総合支援法」と「障害年金」。まずはそれぞれの基本的な内容を理解しましょう。
障害者総合支援法とは
障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)は、障害のある方の地域生活や就労などを支援するためのサービスを提供する法律です。2013年に施行され、その後も随時改正されながら現在に至っています。
この法律の特徴は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害、高次脳機能障害を含む)のほか、難病患者も対象としている点です。いわゆる「三障害一元化」により、障害の種類に関わらず必要なサービスを受けられるようになりました。
障害者総合支援法に基づくサービスは、大きく分けて「障害福祉サービス」と「地域生活支援事業」の二つに分類されます。これらのサービスを利用するには、原則として市区町村の窓口で申請し、「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。
障害年金とは
一方、障害年金は年金制度の一つで、病気やケガによって生活や仕事などに支障をきたす状態になった場合に受け取れる年金です。国民年金の加入者が対象となる「障害基礎年金」と、厚生年金の加入者が対象となる「障害厚生年金」の2種類があります。
障害年金の特徴は、継続的に現金給付を受けられる点です。障害の程度により「1級」「2級」(障害厚生年金は「3級」もあり)に分かれ、等級に応じた金額が支給されます。2025年度の場合、障害基礎年金1級は月額約86,600円、2級は月額約69,300円となっています。
障害年金の受給には、初診日の時点で年金に加入していたことや、保険料納付要件を満たしていることなどの条件があります。申請は、年金事務所または市区町村の国民年金窓口で行います。
両制度の関係
障害者総合支援法のサービスと障害年金は、それぞれ独立した制度であり、受給条件が合えば両方を同時に利用することができます。両者の主な違いは以下のとおりです:
項目 | 障害者総合支援法 | 障害年金 |
---|---|---|
給付の形態 | 現物給付(サービス提供) | 現金給付 |
対象者 | 身体・知的・精神障害、難病患者 | 初診日に年金加入中で保険料納付要件等を満たす方 |
申請窓口 | 市区町村の障害福祉課 | 年金事務所または市区町村の国民年金窓口 |
判定基準 | 障害支援区分(区分1〜6) | 障害等級(1〜3級) |
目的 | 日常生活や社会生活の支援 | 所得保障 |
この二つの制度を組み合わせることで、サービス(支援)と所得の両面からサポートを受けることができます。
障害者総合支援法のサービス種類と利用方法
障害者総合支援法のサービスは多岐にわたります。ここでは、主なサービスの種類と、実際の利用方法について説明します。
介護給付と訓練等給付
障害福祉サービスは、主に「介護給付」と「訓練等給付」に分けられます。
介護給付(障害支援区分の認定が必要)
居宅介護(ホームヘルプ)
自宅で入浴、排せつ、食事などの介助を受けられます。
重度訪問介護
重度の肢体不自由者で常に介護が必要な方に、自宅で長時間にわたる介護や外出時の移動支援などを行います。
同行援護
視覚障害により移動が困難な方に、外出時の移動支援を行います。
行動援護
知的障害や精神障害により行動が困難な方に、外出時の移動支援や行動援護を行います。
短期入所(ショートステイ)
介護者が病気などの場合、短期間、施設で入浴、排せつ、食事などの介助を受けられます。
生活介護
常に介護が必要な方に、施設で入浴、排せつ、食事などの介助や創作的活動などの機会を提供します。
施設入所支援
施設に入所する方に、夜間や休日の入浴、排せつ、食事などの介助を行います。
訓練等給付(障害支援区分の認定が不要なものもあります)
自立訓練
自立した日常生活や社会生活ができるよう、一定期間、身体機能や生活能力の向上のために必要な訓練を行います。
就労移行支援
一般企業への就職を希望する方に、一定期間、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練を行います。
就労継続支援(A型・B型)
一般企業での就労が困難な方に、働く場を提供するとともに、知識・能力の向上のための訓練を行います。
共同生活援助(グループホーム)
地域で共同生活を営む住居で、相談や日常生活上の援助を行います。
地域生活支援事業
地域生活支援事業は、地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟に実施される事業です。市区町村によって内容が異なりますが、主なものには以下があります:
移動支援
外出時の移動を支援します。
日常生活用具の給付
日常生活に必要な用具を給付または貸与します。
コミュニケーション支援
手話通訳者や要約筆記者を派遣します。
地域活動支援センター
創作的活動や生産活動、社会との交流の促進などを行います。
利用の流れとポイント
障害者総合支援法のサービスを利用するには、以下の流れでの手続きが必要です:
1.相談・申請
市区町村の障害福祉課に相談し、申請書を提出します。
2.障害支援区分の認定
介護給付を利用する場合は、調査員による訪問調査や医師の意見書をもとに「障害支援区分」(区分1〜6)が認定されます。数字が大きいほど支援の必要度が高いことを示します。
3.サービス等利用計画案の作成
指定特定相談支援事業者(計画相談支援事業所)に依頼して作成するか、自分で作成します。
4.支給決定
市区町村が支給を決定し、「受給者証」が交付されます。
5.サービス等利用計画の作成
計画相談支援事業所などでサービス等利用計画を作成します。
6.サービス利用開始
受給者証を事業者に提示してサービスを利用します。
利用にあたってのポイントとしては、以下の点に注意しましょう:
自己負担
原則として利用料の1割を負担しますが、所得に応じて月額上限があります。市区町村民税非課税世帯であれば無料になる場合もあります。
更新手続き
支給決定には有効期間があるため、継続して利用する場合は更新手続きが必要です。
相談支援専門員の活用
制度が複雑で分かりにくい場合は、相談支援専門員に相談すると良いでしょう。利用者のニーズに合わせたサービス調整を行ってくれます。
障害年金との併用で生活はどう変わる?
障害者総合支援法のサービスと障害年金を併用することで、生活はどのように変わるのでしょうか。具体的なケースを見ていきましょう。
経済的な側面での変化
障害年金は、生活を送るための「所得保障」という役割があります。一方、障害者総合支援法のサービスは、日常生活や社会参加を支援するものです。両者を併用することで、以下のような経済的なメリットがあります:
1.基本的な生活費の確保
障害年金により、食費、住居費などの基本的な生活費をカバーできます。
2.サービス利用による支出の抑制
ホームヘルプなどのサービスを利用することで、それらを民間サービスで賄う場合に比べて費用を抑えられます。
3.就労支援による収入増
就労移行支援や就労継続支援などを利用して就労することで、障害年金に加えて工賃や給与を得られる可能性があります。
例えば、障害基礎年金2級(月約6.9万円)を受給している方が、就労継続支援B型(平均工賃:月約1.6万円)を利用する場合、合計で月約8.5万円の収入になります。さらに、障害者総合支援法のサービスを利用することで、日常生活の負担も軽減されます。
日常生活の質の向上
経済面だけでなく、日常生活の質も向上します:
1.介護負担の軽減
居宅介護や重度訪問介護などのサービスにより、家族の介護負担が軽減されます。
2.社会参加の促進
移動支援や同行援護などを利用することで、外出の機会が増え、社会参加が促進されます。
3.生活リズムの確立
日中活動系サービス(生活介護や就労継続支援など)を利用することで、規則正しい生活リズムが確立されます。
4.将来への不安軽減
グループホームなどの住まいの場を確保することで、「親亡き後」の生活への不安が軽減されます。
障害者総合支援法と障害年金の相互関係
障害者総合支援法のサービスと障害年金は、直接的な相互関係はなく、それぞれの受給要件を満たせば併用できます。ただし、以下の点に注意が必要です:
1.自己負担額の算定
障害者総合支援法のサービス利用時の自己負担額は、世帯の所得によって決まります。障害年金は「収入」ではなく「所得」として計算されるため、障害年金の受給により自己負担額が増える場合があります。
2.生活保護との関係
障害年金を受給することで、生活保護の受給額が減ったり、受給資格がなくなったりする場合があります。一方、障害者総合支援法のサービスは生活保護と併用できます。
3.就労収入との関係
就労系サービスを利用して収入を得ると、障害年金の等級見直しの際に影響する可能性があります(特に安定して長時間働ける場合)。ただし、収入額自体が直接的に障害年金の金額に影響することはありません(20歳前傷病による障害基礎年金で一定以上の所得がある場合を除く)。
障害種別に見る効果的な制度活用法
障害の種類や程度によって、効果的な制度の活用方法は異なります。ここでは障害種別ごとの特徴と、制度活用のポイントを紹介します。
身体障害の場合
身体障害の方の場合、移動や身体介護に関するサービスのニーズが高いことが特徴です。
おすすめのサービス組み合わせ例:
重度の場合
障害基礎年金1級または障害厚生年金1・2級 + 居宅介護/重度訪問介護 + 補装具費支給
中度の場合
障害基礎年金2級または障害厚生年金3級 + 同行援護/移動支援 + 日常生活用具給付
身体障害の方は、比較的障害状態が固定しているため、障害年金の受給要件を満たしやすい傾向があります。また、障害の部位や程度が明確なため、必要なサービスも特定しやすいでしょう。
活用のポイントとしては、補装具や日常生活用具の給付制度を積極的に利用することが挙げられます。車いす、義肢、歩行器、特殊寝台など、日常生活に必要な用具が給付または貸与されます。
知的障害の場合
知的障害の方の場合、生活面での支援や就労支援へのニーズが高い傾向があります。
おすすめのサービス組み合わせ例:
重度の場合
障害基礎年金1級 + 生活介護 + 短期入所 + 居宅介護
中軽度の場合
障害基礎年金2級 + 就労継続支援B型/A型 + 行動援護 + グループホーム
知的障害の方の場合、20歳前から障害がある方が多いため、「20歳前傷病による障害基礎年金」を受給されるケースが多いでしょう。この場合、本人の所得による支給制限がありますが、通常の就労継続支援での工賃程度であれば影響はほとんどないと考えられます。
活用のポイントとしては、相談支援専門員をうまく活用することが挙げられます。サービスや制度が複雑で分かりにくい場合、相談支援専門員がアドバイスや調整を行ってくれます。また、将来的なグループホーム入居なども視野に入れた長期的な生活設計を考えることも重要です。
精神障害の場合
精神障害の方の場合、状態の波があることが特徴で、柔軟な支援体制が必要です。
おすすめのサービス組み合わせ例:
症状が重い場合
障害基礎年金2級 + 自立訓練(生活訓練) + 地域活動支援センター
比較的安定している場合
障害基礎年金2級または障害厚生年金3級 + 就労移行支援/就労継続支援 + 計画相談支援
精神障害の方の場合、障害年金の申請時に症状の波や日常生活の困難さを正確に伝えることが重要です。診断書を作成する医師に、調子の良い時だけでなく悪い時の状態もしっかり伝えましょう。
活用のポイントとしては、症状の波に合わせて利用できる柔軟なサービスを選ぶことが挙げられます。例えば、地域活動支援センターは比較的自由に通所でき、調子に合わせて過ごせる場所です。また、就労系サービスを利用する場合も、無理のないペースで取り組めるB型などから始めるのがおすすめです。
申請手続きの流れとポイント
障害者総合支援法のサービスと障害年金、それぞれの申請手続きの流れとポイントを解説します。
障害者総合支援法のサービス申請手続き
障害者総合支援法のサービスを申請する際の流れは以下のとおりです:
1.情報収集・相談
市区町村の障害福祉課や基幹相談支援センターで情報収集や相談をします。
2.申請
「介護給付費等支給申請書」に必要事項を記入し、以下の書類を添えて市区町村に提出します。
・障害者手帳または自立支援医療受給者証のコピー
・マイナンバーが確認できる書類
・収入状況が分かる書類(非課税証明書、課税証明書など)
3.障害支援区分の認定調査
市区町村の調査員が自宅などを訪問し、心身の状況などについて調査します。
4.医師意見書の作成
指定の医師が医学的観点から意見書を作成します。
5.審査会による審査・判定
市区町村審査会が調査結果と医師意見書をもとに審査し、障害支援区分を判定します。
6.サービス等利用計画案の作成
相談支援事業所に依頼するか、自分で作成します。
7.支給決定
市区町村が支給を決定し、「受給者証」が交付されます。
8.サービス等利用計画の作成
サービスの具体的な利用計画を作成します。
9.サービス利用開始
事業者と契約を結び、サービスの利用を開始します。
申請のポイント:
- 積極的に情報収集し、自分に合ったサービスを知ることが大切です。
- 相談支援専門員に相談することで、適切なサービスを組み合わせた計画を立てられます。
- 障害支援区分の認定調査では、「できる日」だけでなく「できない日」の状況もしっかり伝えましょう。
- 医師意見書は重要な判断材料になるため、日頃の困りごとを医師に伝えておくことが大切です。
障害年金の申請手続き
障害年金の申請手続きの流れは以下のとおりです:
1.情報収集・相談
年金事務所や市区町村の国民年金担当窓口で情報収集や相談をします。
2.診断書の作成依頼
指定の診断書様式に、医師が記入します(有料)。
3.申請書類の準備
以下の書類を準備します。
・障害認定日または現状の診断書
・年金請求書(年金事務所や市区町村の窓口で入手)
・戸籍謄本(発行から1ヶ月以内のもの)
・病歴・就労状況等申立書(障害認定日より前の症状や就労状況を記載)
・受診状況等証明書(障害認定日より前の症状や受診した年月日を医療機関に証明してもらう書類)
4.申請書の提出
準備した書類を年金事務所または市区町村の国民年金窓口に提出します。
5.審査
日本年金機構の審査を経て、障害の程度が判定されます。
6.結果通知
審査結果が通知され、認定された場合は年金が支給されます。
申請のポイント:
- 初診日を証明できる書類が重要です。初診の医療機関の受診状況等証明書などを用意しましょう。
- 診断書は障害の状態を正確に伝えることが大切です。日常生活の困難さを具体的に医師に伝えましょう。
- 「病歴・就労状況等申立書」には、障害によって日常生活や就労にどのような支障があるかを具体的に記入しましょう。
- 不支給になった場合でも、再度請求することができます。状態が変化した場合や新たな資料が揃った場合は、再請求を検討しましょう。
よくある疑問と回答
障害者総合支援法と障害年金に関するよくある疑問と回答をまとめました。
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障害者手帳がないと障害者総合支援法のサービスは利用できませんか?
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障害者手帳がなくても利用できる場合があります。障害者総合支援法では、障害者手帳の有無ではなく、「障害があることを確認できる書類」が必要です。具体的には、医師の診断書や意見書、自立支援医療受給者証などでも対応できる場合があります。また、難病患者の方は、特定医療費(指定難病)受給者証などで対応可能です。まずは市区町村の障害福祉課に相談してみましょう。
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障害年金を受給しながら就労継続支援A型・B型を利用できますか?
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はい、障害年金を受給しながら就労継続支援A型・B型を利用することができます。障害年金は原則として収入により減額されることはないため(20歳前傷病による障害基礎年金で一定以上の所得がある場合を除く)、就労系サービスでの工賃や給与と障害年金を同時に受け取ることが可能です。ただし、A型の場合、安定して長時間就労できることが、次回の障害年金更新時に「障害状態の改善」と判断される可能性がある点には注意が必要です。
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障害者総合支援法のサービスを利用する際の自己負担はどのくらいですか?
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原則として利用料の1割を負担しますが、所得に応じて月額上限があります。2025年現在の目安は以下のとおりです:
・生活保護受給世帯:0円
・市区町村民税非課税世帯:0円
・市区町村民税課税世帯(所得割16万円未満):月額上限9,300円
・市区町村民税課税世帯(所得割16万円以上):月額上限37,200円
・市区町村民税課税世帯(所得割46万円以上):月額上限93,000円また、施設入所支援やグループホームを利用する場合は、別途、食費や光熱水費などの実費負担があります。詳細は市区町村の窓口でご確認ください。
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障害年金の申請が不支給になった場合、どうすればよいですか?
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不支給決定に納得がいかない場合は、以下の対応が考えられます:
1.審査請求:決定通知を受け取った日の翌日から3か月以内に、社会保険審査官に審査請求をすることができます。
2.状態の変化を待って再請求:障害の状態が悪化した場合は、新たな診断書をもとに再度請求することができます。
3.専門家への相談:社会保険労務士など、障害年金の申請に詳しい専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けられる場合があります。不支給になった理由をしっかり確認し、次回の申請に活かすことが大切です。
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制度活用の成功事例
実際に障害者総合支援法のサービスと障害年金を上手に組み合わせている方々の事例を紹介します。
事例1:身体障害のAさん(50代男性)
脳梗塞の後遺症で左半身に麻痺があるAさんは、障害基礎年金2級(月額約6.9万円)を受給しています。平日の日中は生活介護サービスを利用し、創作活動やリハビリを行っています。また、週に2回、居宅介護サービスを利用して入浴の介助を受けています。
Aさんは、障害者総合支援法のサービスを利用することで、自宅での生活を続けられています。障害年金が基本的な生活費を支え、福祉サービスが日常生活の支援を担うという役割分担で、安定した生活を送っています。「障害年金だけでは生活が厳しいけれど、サービスを利用することで外部のヘルパーなどを雇う費用が節約できている」とAさんは話します。さらに、日常生活用具給付事業を利用して、特殊ベッドや入浴補助用具なども支給してもらい、生活の質を高めています。
事例2:精神障害のBさん(30代女性)
統合失調症で通院中のBさんは、障害基礎年金2級(月額約6.9万円)を受給しています。症状の波があり一般就労が難しいため、週3日、就労継続支援B型事業所に通所し、軽作業を行っています。月に約1.5万円の工賃を得て、障害年金と合わせて月約8.4万円の収入があります。
Bさんは計画相談支援も利用しており、相談支援専門員に定期的に相談しながら、サービス利用計画を見直しています。「障害年金があることで生活の基盤ができ、焦らずに自分のペースで働けるのがいい」とBさんは言います。最近では症状が安定してきたため、将来的には就労移行支援に移行し、一般就労を目指すことも検討しています。
事例3:知的障害のCさん(20代男性)
知的障害があるCさんは、20歳になった時点で障害基礎年金2級(月額約6.9万円)の受給を開始しました。平日は就労継続支援A型事業所で働き、月約8万円の給与を得ています。週末は移動支援サービスを利用して、買い物やレジャーを楽しんでいます。また、将来の自立に向けて、グループホームの体験利用も始めました。
Cさんの家族は「障害年金と就労継続支援A型の給与で、経済的にかなり安定しています。さらに、移動支援のおかげで本人の行動範囲が広がり、生活が豊かになりました」と話します。一方で、「A型で安定して働けるようになったことで、次回の障害年金更新時に等級が下がる可能性も心配」とも言います。そのため、定期的に相談支援専門員や社会保険労務士に相談し、最適な支援体制を検討しています。
まとめ:両制度を活用して生活の質を高めるために
障害者総合支援法のサービスと障害年金について、ポイントをまとめます:
1.両制度の特徴を理解する
- 障害者総合支援法:日常生活や社会生活を支援するサービスを提供
- 障害年金:障害による稼得能力の低下を補うための現金給付
2.障害年金は生活の基盤として活用
- 食費、住居費などの基本的な生活費をカバー
- 収入に応じた生活設計の基礎となる
3.障害者総合支援法のサービスは生活の質向上に活用
- 介護サービスによる日常生活の支援
- 就労系サービスによる社会参加と収入確保
- 相談支援による適切なサービス調整
4.申請手続きのポイント
- 障害者総合支援法:市区町村の障害福祉課に相談し、必要なサービスを申請
- 障害年金:初診日や保険料納付要件を確認し、医師の診断書を添えて申請
5.障害特性に合わせた制度活用
- 身体障害:介護系サービスと補装具等の活用
- 精神障害:状態の波に合わせた柔軟なサービス利用
- 知的障害:生活支援と就労支援の組み合わせ
6.専門家のサポートを活用
- 相談支援専門員:障害者総合支援法のサービス利用計画作成
- 社会保険労務士:障害年金の申請サポート
障害者総合支援法のサービスと障害年金を上手に組み合わせることで、経済的な安定と生活の質の向上の両方を実現できます。自分に合ったサービスや支援を知り、積極的に活用することが大切です。
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉課や基幹相談支援センターに相談してみましょう。また、障害年金の申請については、年金事務所や社会保険労務士に相談することもおすすめします。様々な専門家と連携しながら、より良い生活を実現するためのプランを立てていきましょう。