Contents
- この記事で解決できること
- 【結論】障害年金と介護保険は併用可能!基本的な関係を理解する
- 2. それぞれの制度を利用できる条件と対象者
- 3. 給付内容の違いを比較|現金給付 vs サービス給付
- 4. 【ステップ別】両制度の申請手続きと必要書類
- 5. 効果的なサービス利用プランの立て方
- 6. 自己負担を最小化する!費用軽減制度の完全活用術
- 7. ケース別活用事例|年齢・障害種別ごとの最適プラン
- 8. 困った時の相談窓口と専門家の選び方
- 9. 定期見直しのタイミングとチェックポイント
- 10. 家族介護者が知っておくべき支援制度
- 11. まとめ:両制度を賢く使って生活の質を向上させる
- あなたに合った最適プランを専門家がサポートします
- よくある質問(FAQ)
この記事で解決できること
- 障害年金と介護保険は同時に利用できるのかがわかる
- 両制度を組み合わせた時の経済的メリットが理解できる
- 申請から実際のサービス利用までの具体的な流れがわかる
- 自己負担を最小限に抑える方法が見つかる
「障害年金をもらっていると介護保険は使えないの?」「両方利用すると負担が増えるのでは?」──そんな不安を抱えていませんか?
実は、障害年金と介護保険は併用可能であり、むしろ組み合わせることで経済的にも生活面でも大きなメリットが得られます。しかし、この事実を知らずに、利用できる支援を受けていない方が少なくありません。
本記事では、社会保険労務士監修のもと、障害年金と介護保険の相互関係から具体的な活用方法まで、実務経験に基づいた実践的な情報を徹底解説します。
【結論】障害年金と介護保険は併用可能!基本的な関係を理解する
1. 最も重要な事実:両制度は併用できる
まず最初に、最も重要な結論をお伝えします。
障害年金と介護保険は同時に利用できます。
- 障害年金を受給していても介護保険は使える
- 介護保険を利用していても障害年金の受給資格に影響しない
- 両方を組み合わせることで、より充実した生活支援が実現
この2つの制度は互いに制限を設けていないため、条件を満たせば両方のメリットを享受できます。
2. 2つの制度の役割分担
両制度の関係を理解するには、それぞれの役割の違いを把握することが重要です。
【障害年金の役割】
お金の支援(所得保障)
↓
生活費、医療費、介護費用などに自由に使える現金給付
【介護保険の役割】
サービスの支援(現物給付)
↓
訪問介護、デイサービスなど具体的なサービスを利用
例えるなら、**障害年金は「給料」、介護保険は「福利厚生サービス」**のようなもの。給料(現金)があり、さらに会社の福利厚生(サービス)も使える状態が理想です。
3. 併用することで得られる3つのメリット
メリット①:経済的安定とサービス利用の両立
障害年金で経済的基盤を確保しながら、介護保険で専門的なサービスを受けられます。
メリット②:自己負担の計画的な支出が可能
定期的な年金収入があることで、介護保険サービスの自己負担分(1〜3割)を安定的に支払えます。
メリット③:家族の介護負担を軽減
経済的余裕とサービス利用により、家族だけで抱え込まずに済みます。
4. よくある誤解を解消
❌ 誤解1: 「障害年金をもらうと介護保険が使えなくなる」
✓ 正解: 全く影響しません。両方とも利用可能です。
❌ 誤解2: 「介護保険を使うと障害年金が減額される」
✓ 正解: 減額されません。それぞれ独立した制度です。
❌ 誤解3: 「申請窓口が同じだから、一度に申請できる」
✓ 正解: 窓口は別です。障害年金は年金事務所、介護保険は市区町村です。
2. それぞれの制度を利用できる条件と対象者
1. 障害年金の利用条件(おさらい)
基本的な要件:
- 原則、初診日に公的年金に加入していた
- 一定の保険料納付要件を満たしている
- 障害認定日に障害等級1〜3級(または障害手当金)に該当
対象年齢:障害年金の請求時に20~64歳
2. 介護保険の利用条件
第1号被保険者(65歳以上):
原因を問わず、要支援・要介護認定を受ければ利用可能
第2号被保険者(40〜64歳):
特定疾病(16疾病)に該当し、要支援・要介護認定を受ければ利用可能
3. 40〜64歳で利用できる特定疾病一覧
介護保険を利用できる16の特定疾病:
| 疾病名 | 具体例 |
|---|---|
| がん(末期) | 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの |
| 関節リウマチ | – |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | – |
| 後縦靭帯骨化症 | – |
| 骨折を伴う脊粗鬆症 | – |
| 初老期における認知症 | アルツハイマー病、血管性認知症等 |
| 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病 | – |
| 脊髄小脳変性症 | – |
| 脊柱管狭窄症 | – |
| 早老症 | ウェルナー症候群等 |
| 多系統萎縮症 | – |
| 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症 | – |
| 脳血管疾患 | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等 |
| 閉塞性動脈硬化症 | – |
| 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 肺気腫、慢性気管支炎等 |
| 両側の膝関節または股関節の著しい変形を伴う変形性関節症 | – |
重要: この特定疾病に該当しない場合、40〜64歳では介護保険を利用できません。
4. 両制度を利用できる典型的なケース
ケース①:60歳・脳梗塞による障害
- 障害年金:障害厚生年金2級を受給
- 介護保険:要介護3の認定を受けサービス利用
- 経済面と生活面の両方で手厚い支援
ケース②:45歳・パーキンソン病
- 障害年金:障害基礎年金2級を受給
- 介護保険:特定疾病該当で要介護2の認定
- 比較的若い年齢でも両制度を活用
ケース③:68歳・変形性関節症による障害
- 障害年金:障害基礎年金2級を受給
- 介護保険:要介護1の認定
- 老齢年金との選択も含め、最適な年金を受給
3. 給付内容の違いを比較|現金給付 vs サービス給付
1. 障害年金の給付内容
給付形態: 現金給付(2ヶ月に1回、偶数月の15日振込)
給付額の目安(2025年度):
| 等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金(例) |
|---|---|---|
| 1級 | 年額約103万円 | 基礎年金+報酬比例分 × 1.25 |
| 2級 | 年額約83万円 | 基礎年金+報酬比例分 |
| 3級 | – | 年額約62万円〜 |
使途: 制限なし(生活費、医療費、介護費用など自由に利用可能)
2. 介護保険の給付内容
給付形態: サービス給付(現物給付が原則)
利用できるサービスの種類:
在宅サービス:
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 福祉用具貸与・購入
- 住宅改修
施設サービス:
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
地域密着型サービス:
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)など
3. 要介護度別の利用限度額(2025年度)
| 要介護度 | 月額利用限度額 | 1割負担の場合の自己負担上限 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 約50,320円 | 約5,032円 |
| 要支援2 | 約105,310円 | 約10,531円 |
| 要介護1 | 約167,650円 | 約16,765円 |
| 要介護2 | 約197,050円 | 約19,705円 |
| 要介護3 | 約270,480円 | 約27,048円 |
| 要介護4 | 約309,380円 | 約30,938円 |
| 要介護5 | 約362,170円 | 約36,217円 |
重要: この限度額を超えた分は全額自己負担となります。
4. 両給付を組み合わせた具体例
モデルケース:65歳・要介護3・障害基礎年金2級受給者
【収入】
障害基礎年金:月額約69,000円
【支出(介護関連)】
介護保険サービス自己負担:約27,000円(1割負担)
医療費:約10,000円
その他介護用品等:約5,000円
―――――――――――――――――
合計支出:約42,000円
【差し引き】
69,000円 – 42,000円 = 27,000円
→ この金額を生活費等に充当可能
障害年金という安定収入があることで、介護サービスを躊躇なく利用できる状態を作れます。
4. 【ステップ別】両制度の申請手続きと必要書類
1. 申請の順序:どちらから申請すべきか
結論: 状況に応じて柔軟に判断
パターン①:障害年金が先、介護保険が後のケース
- まず障害年金を申請(障害認定日から)
- 要介護状態になった時点で介護保険を申請
- 多くの場合、このパターン
パターン②:同時進行するケース
- 脳血管疾患など、突然の発症で両方の要件を満たす場合
- 障害年金と介護保険を並行して申請
- それぞれ窓口が異なるため、個別に手続き
パターン③:介護保険利用中に障害年金要件を満たすケース
- すでに介護保険を利用中
- 障害の程度が障害年金の要件を満たすと判明
- 遡及請求も検討
2. 障害年金の申請手続き(簡易版)
申請窓口:
年金事務所または街角の年金相談センター
必要書類:
年金請求書
診断書(障害年金用)
受診状況等証明書(初診証明)
病歴・就労状況等申立書
年金手帳または基礎年金番号通知書
本人確認書類
預金通帳のコピー
所要期間: 申請から決定まで約3〜4ヶ月
3. 介護保険の申請手続き
申請窓口: 市区町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センター
ステップ①:申請
- 申請書を提出(本人または家族、ケアマネジャーなど代行可)
- 介護保険被保険者証を提示
ステップ②:認定調査
- 市区町村の調査員が自宅等を訪問
- 心身の状態について聞き取り調査(約1時間)
- 調査項目:74項目の基本調査+特記事項
ステップ③:主治医意見書
- 市区町村が主治医に依頼(本人の手続き不要)
- 病状、生活機能、認知機能等について記載
ステップ④:審査判定
- 一次判定(コンピュータ判定)
- 二次判定(介護認定審査会)
ステップ⑤:認定結果の通知
- 申請から約30日以内に結果通知
- 要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかに認定
所要期間: 申請から認定まで約30日(原則)
4. 両制度で診断書・意見書はどう違う?
重要な注意点: それぞれの制度で求められる内容が異なります
| 項目 | 障害年金の診断書 | 介護保険の主治医意見書 |
|---|---|---|
| 目的 | 障害の程度を判定 | 介護の必要度を判定 |
| 様式 | 障害の種類別に8種類 | 統一様式 |
| 記載内容 | 病状、検査数値、日常生活能力など | 病状、認知機能、ADL、医家的管理の必要性など |
| 作成者 | 専門医が望ましい | かかりつけ医でOK |
| 費用 | 5,000~10,000円程度 | 無料(市区町村が医師に支払い) |
同時期に申請する場合の注意点:
主治医に「障害年金と介護保険の両方を申請する」と伝えることで、整合性のある書類を作成してもらえます。
5. 効果的なサービス利用プランの立て方
1. ケアプラン作成の基本的な流れ
ステップ①:ケアマネジャーの選定
- 介護認定後、居宅介護支援事業所を選ぶ
- 担当のケアマネジャーが決定
ステップ②:アセスメント(課題分析)
- ケアマネジャーが自宅訪問
- 生活状況、困りごと、希望などを聞き取り
- この時、障害年金受給の事実も伝える
ステップ③:ケアプランの作成
- アセスメントを基に、利用するサービスを提案
- 本人・家族の希望を反映
- 限度額内での最適なサービス組み合わせを検討
ステップ④:サービス担当者会議
- ケアマネ、サービス事業者、本人・家族が参加
- プラン内容の確認と調整
ステップ⑤:サービス利用開始
- ケアプランに沿ってサービス開始
- 毎月のサービス提供状況を確認
2. 障害年金を活かしたサービス選択のポイント
ポイント①:限度額ギリギリまで使う必要はない
- 必要なサービスを必要な分だけ利用
- 障害年金があるからといって過剰利用は避ける
ポイント②:自己負担を見越した計画的利用
- 月額の年金額から介護費用を逆算
- 無理のない範囲でサービスを選択
ポイント③:介護保険外サービスとの組み合わせ
- 限度額を超える部分は自費サービス
- 障害年金で経済的余裕があれば、必要に応じて利用
ポイント④:福祉用具の活用
- 車いす、介護ベッド、歩行器などのレンタル
- 購入が必要な場合(ポータブルトイレ等)は年間上限あり
3. 要介護度別おすすめサービス組み合わせ例
要支援1〜2の場合:
- 週1回:訪問介護(生活援助)
- 週2回:通所介護(デイサービス)
- 必要に応じて:福祉用具レンタル
→ 自立を支援しつつ、社会参加を促進
要介護1〜2の場合:
- 週2〜3回:訪問介護(身体介護+生活援助)
- 週2回:通所介護
- 月1回:短期入所(家族のレスパイト)
- 福祉用具レンタル
→ 在宅生活を維持しながら家族負担も軽減
要介護3〜5の場合:
- 毎日:訪問介護(複数回)
- 週3回:通所介護または訪問入浴
- 訪問看護
- 福祉用具レンタル
- 必要に応じて:短期入所
→ 重度でも在宅生活を継続できる体制構築
または施設入所も検討
4. ケアマネジャーに伝えるべき重要事項
ケアプラン作成時に以下を必ず伝えましょう:
- 障害年金を受給していること
- 月額の年金受給額
- 介護に充てられる予算の上限
- 家族の介護可能な時間帯・曜日
- 本人の生活上の希望や目標
- 利用したいサービス、避けたいサービス
6. 自己負担を最小化する!費用軽減制度の完全活用術
1. 介護保険サービスの自己負担割合
自己負担割合の決まり方:
| 所得区分 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 一般所得者 | 1割 |
| 一定以上所得者 | 2割 |
| 現役並み所得者 | 3割 |
判定基準(65歳以上・第1号被保険者の場合):
- 本人の合計所得金額と年金収入等で判定
- 世帯の課税状況も考慮
障害年金は非課税のため:
- 障害年金のみの収入なら「一般所得者=1割負担」になるケースが多い
- 他に課税所得がある場合は2〜3割負担の可能性も
2. 高額介護サービス費制度
月額の自己負担上限を設定:
| 所得区分 | 月額上限 |
|---|---|
| 高所得者 | 所得による |
| 一般所得者 | 44,400円 |
| 市町村民税世帯非課税 | 24,600円 |
| 市町村民税世帯非課税かつ本人年金収入80.9万円以下等 | 15,000円 |
| 生活保護受給者等 | 15,000円 |
しくみ:
- 月額自己負担が上限を超えた場合、超過分が後日払い戻し
- 初回のみ申請が必要(2回目以降は自動的に振込)
例:
要介護4で月額30,000円の自己負担が発生
→ 市町村民税世帯非課税の場合
30,000円 – 24,600円 = 5,400円が払い戻し
実質負担:24,600円/月
3. 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療保険と介護保険の自己負担を合算し、年額の上限を設定:
| 所得区分(70歳以上) | 年額上限 |
|---|---|
| 現役並み所得者Ⅲ | 212万円 |
| 現役並み所得者Ⅱ | 141万円 |
| 現役並み所得者Ⅰ | 67万円 |
| 一般所得者 | 56万円 |
| 低所得者Ⅱ | 31万円 |
| 低所得者Ⅰ | 19万円 |
活用例:
【1年間の自己負担】
医療費:30万円
介護費:35万円
合計:65万円
【一般所得者の場合】
上限56万円を超過
65万円 – 56万円 = 9万円が払い戻し
4. その他の負担軽減制度
①社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
- 低所得で生計が困難な方が対象
- 社会福祉法人が提供するサービスの自己負担を軽減
- 最大25%〜50%軽減
②障害者ホームヘルプサービス利用者負担額減免制度
- 障害者施策でホームヘルプを利用していた方が、介護保険に移行した場合
- 一定期間、利用者負担を軽減
③市区町村独自の助成制度
- 自治体によって独自の減免制度あり
- 担当窓口で確認を
④食費・居住費の減額(補足給付)
- 施設入所やショートステイ利用時
- 低所得者は食費・居住費が減額
5. 障害者総合支援法との併用
65歳未満または特定のサービス:
- 介護保険と障害福祉サービスの併用が可能な場合あり
- 原則は介護保険優先だが、介護保険にないサービスは障害福祉で利用可能
例:
移動支援(外出時の付き添い)
就労継続支援
自立訓練
併用のポイント:
- 障害者手帳を持っている場合は、市区町村の障害福祉担当にも相談
- より幅広いサービスを受けられる可能性
7. ケース別活用事例|年齢・障害種別ごとの最適プラン
ケース①:45歳・パーキンソン病・独居
状況:
- 障害基礎年金2級受給(月額約69,000円)
- 要介護2認定
- 一人暮らし
- 軽度の認知機能低下あり
サービス利用プラン:
- 週3回:訪問介護(午前の身体介護+生活援助)
- 週2回:通所介護(デイサービス)
- 月1回:訪問看護
- 福祉用具レンタル(手すり、歩行器)
月額自己負担:約19,000円
ポイント:
- 障害年金で安定した収入があるため、必要なサービスを躊躇なく利用
- デイサービスで社会参加を維持
- 独居でも在宅生活を継続できる体制
残りの年金の使い道:
- 生活費:約30,000円
- 医療費:約10,000円
- 貯蓄:約10,000円
ケース②:68歳・脳梗塞後遺症・妻と二人暮らし
状況:
- 障害厚生年金2級受給(月額約130,000円)
- 要介護3認定
- 右半身麻痺あり
- 妻(65歳)が主な介護者だが高齢で負担大
サービス利用プラン:
- 毎日:訪問介護(朝・夕の身体介護)
- 週3回:通所リハビリテーション
- 月2回:短期入所(妻のレスパイト)
- 訪問入浴(週1回)
- 福祉用具レンタル(介護ベッド、車いす等)
月額自己負担:約27,000円
ポイント:
- 妻の介護負担軽減を重視
- 短期入所で定期的に妻が休息できる時間を確保
- リハビリで機能維持・改善を目指す
経済面:
- 年金額が比較的多いため、限度額近くまでサービス利用
- 妻の健康維持が最優先課題
ケース③:72歳・認知症・長男家族と同居
状況:
- 障害基礎年金1級受給(月額約86,000円)
- 要介護4認定
- アルツハイマー型認知症
- 長男夫婦と同居だが、昼間は独居状態
サービス利用プラン:
- 週5回:通所介護(デイサービス)
- 週2回:訪問介護(夜間の身体介護)
- 月1回:訪問看護
- 福祉用具レンタル(介護ベッド、ポータブルトイレ等)
- 住宅改修(手すり設置、段差解消)
月額自己負担:約30,000円
ポイント:
- 昼間はデイサービスで安全確保
- 夜間は家族が対応、負担が大きい時のみ訪問介護を利用
- 認知症の進行に合わせてプランを柔軟に変更
将来の検討:
- 要介護度が上がれば施設入所も視野に
- 障害年金で施設利用料の一部をカバー可能
ケース④:52歳・関節リウマチ・要支援2
状況:
- 障害厚生年金3級受給(月額約80,000円)
- 要支援2認定
- 関節の痛みと変形あり
- 配偶者あり、子どもは独立
サービス利用プラン:
- 週1回:訪問介護(掃除など身体負担の大きい家事)
- 週2回:通所介護(運動プログラム)
- 福祉用具レンタル(歩行補助杖)
月額自己負担:約8,000円
ポイント:
- 要支援段階では予防重視
- 運動で関節の可動域維持
- 最小限のサービスで自立を支援
その他の工夫:
- 障害年金を医療費(リウマチ治療薬等)に充当
- 余剰分は貯蓄し、将来の介護度上昇に備える
8. 困った時の相談窓口と専門家の選び方
1. 障害年金に関する相談窓口
①年金事務所
- 全国の年金事務所で相談可能
- 予約制が多いため、事前に電話確認
- 基礎年金番号を準備
②街角の年金相談センター
- 全国社会保険労務士会連合会が運営
- 予約不要の窓口も多い
③ねんきんダイヤル
電話:0570-05-1165
受付時間:月 8:30〜19:00、火〜金 8:30〜17:15、第2土曜 9:30〜16:00
④社会保険労務士
- 障害年金の申請代理が可能
- 特に「障害年金専門」の社労士がおすすめ
- 費用:着手金+成功報酬が一般的
2. 介護保険に関する相談窓口
①市区町村の介護保険担当窓口
- 制度全般、申請手続きについて
- 認定結果への不服申し立て
②地域包括支援センター
- 高齢者の総合相談窓口
- 介護予防、権利擁護なども対応
- 中学校区に1つ程度設置
③居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)
- サービス利用に関する相談
- ケアプラン作成・変更
- サービス事業者との調整
④介護保険サービス事業所
- 各サービスの詳細について
- 施設見学、体験利用の相談
3. 両制度を統合的に相談できる窓口
社会福祉協議会(社協)
- 地域の福祉全般を担当
- 障害年金と介護保険の両方に詳しい職員がいる場合も
- 生活困窮者支援、成年後見なども対応
障害者相談支援事業所
- 障害のある方の総合相談窓口
- 65歳前後で介護保険に移行する際の相談も可能
医療ソーシャルワーカー(MSW)
- 病院に配置されている相談員
- 退院後の生活設計、制度利用について助言
- 特に脳血管疾患等で急に障害・要介護状態になった場合に頼りになる
4. 専門家を選ぶ際のチェックポイント
社会保険労務士(障害年金):
障害年金の実績が豊富か
無料相談を実施しているか
料金体系が明確か
説明が丁寧でわかりやすいか
不支給時の対応方針が明確か
ケアマネジャー(介護保険):
話しやすい雰囲気か
こちらの希望をしっかり聞いてくれるか
サービス事業所との連携がスムーズか
定期的な訪問・連絡があるか
緊急時の対応体制が整っているか
9. 定期見直しのタイミングとチェックポイント
1. 障害年金の定期見直し
更新時期:
- 有期認定の場合:1〜5年ごとに診断書提出
- 提出期限の約3ヶ月前に通知が届く
見直しのポイント:
- 障害の程度が悪化している場合は等級変更(改定請求)を検討
- 改善している場合でも、等級が下がる可能性を想定
等級変更された場合の対応:
等級が上がった場合
→ 年金額増加
→ 介護サービスの利用を拡充できる可能性
等級が下がった場合
→ 年金額減少
→ 介護サービスプランの見直しが必要
2. 介護保険の定期見直し
更新時期:
- 認定有効期間:原則6〜12ヶ月(最長48ヶ月)
- 有効期間満了前に更新申請
区分変更申請:
- 心身の状態が大きく変化した場合、有効期間中でも申請可能
- 要介護度が上がる/下がる両方の可能性
見直しのタイミング:
- 転倒や骨折などで状態が急変した時
- 認知症が進行した時
- リハビリで状態が改善した時
3. 年次の定期チェック項目
毎年確認すべきこと:
経済面のチェック
・年金額と介護費用のバランスは適切か
・高額介護サービス費の申請は済んでいるか
・利用していない軽減制度はないか
サービス利用のチェック
・現在のケアプランは適切か
・使いづらいサービス、満足度の低いサービスはないか
・新たに必要なサービスはないか
健康状態のチェック
・障害の程度に変化はないか
・介護の必要度に変化はないか
・新たな疾病の発症はないか
家族状況のチェック
・主な介護者の健康状態は大丈夫か
・家族構成に変化はないか
・同居・別居の状況に変化はないか
4. 見直しを怠った場合のリスク
❌ 受けられる支援を逃す
状態悪化に気づかず、等級変更の機会を逃す
❌ 過剰なサービス利用
状態改善しているのに、不要なサービスを継続
❌ 経済的な圧迫
軽減制度を知らずに高額な自己負担を続ける
❌ 家族の燃え尽き
適切なサービス追加をせず、家族が疲弊
10. 家族介護者が知っておくべき支援制度
1. 家族介護者の負担実態
介護による影響(統計データより):
- 仕事との両立困難:約40%
- 精神的ストレス:約70%
- 身体的負担(腰痛等):約50%
- 社会的孤立:約30%
障害年金と介護保険を適切に活用することで、これらの負担を軽減できます。
2. 家族向けの支援制度
①介護休業制度
- 最長93日間の休業が可能
- 雇用保険から給付金支給(賃金の67%)
- 介護のための短時間勤務制度も
②レスパイトケア(介護保険)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 通所介護(デイサービス)
- これらを活用し、家族が休息を取る
③家族介護慰労金
- 市区町村独自の制度(実施していない自治体もあり)
- 在宅で重度要介護者を介護している家族に支給
- 年額5〜10万円程度が多い
④介護者教室・介護者サロン
- 地域包括支援センター等が開催
- 介護技術の習得、情報交換、仲間づくり
3. 障害年金を家族介護の支援に活用する方法
活用例①:民間サービスの併用
介護保険の限度額を超える部分
→ 障害年金から自費で訪問介護を追加
→ 家族の負担軽減
活用例②:介護用品の購入
おむつ、介護食品、衛生用品など
→ 介護保険の対象外
→ 障害年金で安定的に購入可能
活用例③:家族のレスパイト費用
月1回のショートステイ利用
→ 自己負担約1〜2万円
→ 障害年金から計画的に支出
→ 家族が旅行やリフレッシュの時間を持てる
4. 家族が知っておくべき権利と制度
成年後見制度
- 認知症等で判断能力が低下した場合
- 財産管理や契約行為を支援
- 障害年金の手続き代行も可能
日常生活自立支援事業
- 成年後見制度より軽度の支援
- 福祉サービスの利用援助、金銭管理支援など
- 社会福祉協議会が実施
介護保険の住宅改修費
- 上限20万円(自己負担1〜3割)
- 手すり設置、段差解消、扉の変更など
- 家族の介護負担軽減にもつながる
11. まとめ:両制度を賢く使って生活の質を向上させる
障害年金と介護保険は、併用することで最大の効果を発揮します。本記事のポイントを改めて整理します。
✓ 重要ポイント1:両制度は併用可能で、互いに制限しない
障害年金を受給していても介護保険は使えます。むしろ、経済的基盤(年金)とサービス支援(介護保険)の両輪で、より充実した生活が実現します。
✓ 重要ポイント2:申請窓口と手続きは別々
- 障害年金:年金事務所
- 介護保険:市区町村
それぞれ独立した手続きが必要ですが、主治医には両方を申請することを伝えましょう。
✓ 重要ポイント3:自己負担軽減制度を最大限活用
高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算療養費制度など、知らないと損をする制度が多数あります。市区町村の窓口やケアマネジャーに必ず確認を。
✓ 重要ポイント4:定期的な見直しで常に最適な状態を維持
障害の程度も介護の必要度も変化します。年1回は両制度の利用状況を見直し、必要に応じて等級変更や区分変更を申請しましょう。
✓ 重要ポイント5:一人で抱え込まず、専門家に相談
制度は複雑で、個別の状況によって最適な利用方法が異なります。社会保険労務士、ケアマネジャー、地域包括支援センターなど、専門家の力を借りることが成功の鍵です。
あなたに合った最適プランを専門家がサポートします
「自分のケースではどうすればいいかわからない」
「申請手続きが複雑で不安」
「もっと経済的負担を減らせる方法はない?」
そんな悩みをお持ちの方は、ぜひ専門家にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
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障害年金をもらうと介護保険料が上がりますか?
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いいえ、上がりません。障害年金は非課税所得のため、保険料算定には影響しません。
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65歳未満でも介護保険は使えますか?
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40~64歳の方で16の特定疾病に該当する場合は利用可能です。該当しない場合は障害者総合支援法のサービスを検討しましょう。
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介護施設に入所すると障害年金は止まりますか?
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いいえ、止まりません。施設入所と障害年金受給は無関係です。
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障害年金の診断書と介護保険の意見書は同じ医師が書かないとダメですか?
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同じ医師でなくても構いませんが、同じ医師だと病状の整合性が取れやすいメリットがあります。
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ケアマネジャーに障害年金のことを言わないといけませんか?
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義務ではありませんが、伝えることで経済状況を考慮した適切なプラン作成が可能になります。
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要介護度が上がったら、障害年金の等級も上がりますか?
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自動的には上がりません。それぞれ独立した判定基準のため、別々に申請が必要です。
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参考リンク:
厚生労働省 介護保険制度:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
日本年金機構: https://www.nenkin.go.jp/
地域包括支援センター(全国): https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
記事の監修者情報
池田 清(いけだ きよし)
社会保険労務士 / 障害年金専門
障害年金申請相談実績4,100件以上。
この記事は2025年11月18日時点の情報に基づいています。
制度変更の可能性がありますので、最新情報は厚生労働省の公式サイトまたは各窓口でご確認ください。