障害年金を受給しながら海外移住・長期滞在は可能です。ただし、適切な手続きを怠ると年金が停止される可能性も。この記事では、海外転出前に必ず知っておくべき手続きと注意点を網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 海外でも障害年金を受給できるケースとできないケース
- 出国前に必ず行うべき6つの手続き(時系列チェックリスト付き)
- 20歳前傷病による受給者の特別な注意点
- 海外での年金受取方法と手数料の実態
- 更新時期が海外滞在中の場合の対処法
- 帰国時の手続きと支給再開のプロセス
所要時間の目安: 手続き準備に2〜4週間、完了確認まで1〜2ヶ月
【重要】まず確認:あなたは海外でも年金を受給できる?
障害年金は原則として海外でも受給可能ですが、一部のケースでは支給が停止されます。まずは、あなたのケースを確認しましょう。
受給可能なケース(継続受給できる)
以下に該当する方は、適切な手続きを行えば海外でも年金を継続受給できます:
- 障害厚生年金を受給している方
- 障害基礎年金(20歳以降の傷病による)を受給している方
- 永久認定・有期認定いずれの場合も受給可能
たとえるなら:
海外旅行保険のように、日本の制度でも海外でカバーされる部分があるイメージです。
支給停止になるケース(受給できなくなる)
【最重要注意】20歳前傷病による障害基礎年金を受給している方
20歳に達する前に初診日がある傷病で障害基礎年金を受給している方は、海外に住所を移すと年金の支給が停止されます。
なぜ支給停止になるのか?
20歳前傷病による障害基礎年金は、保険料を納付していない期間の障害に対する福祉的給付という性格があり、「日本国内に住所を有すること」が支給要件となっているためです。
支給停止を避ける方法
残念ながら、法律上の要件のため、避ける方法はありません。ただし、以下の点を理解しておきましょう:
- 支給停止は「住民票を日本から抜いた時点」から
- 一時的な海外滞在(住民票を残す)の場合は停止されない
- 帰国して住民票を戻せば、支給が再開される
判定フローチャート
【質問1】あなたの年金は何ですか?
→ 障害厚生年金(1級・2級・3級):海外でも受給可能
→ 障害基礎年金:次の質問へ
【質問2】初診日は20歳以降ですか?
→ はい(20歳以降):海外でも受給可能
→ いいえ(20歳前):海外では支給停止(手続き必須)
→ わからない:年金証書または年金事務所で確認してください
海外転出前の準備スケジュール(タイムライン)
海外転出が決まったら、以下のスケジュールで準備を進めましょう。
出国3ヶ月前〜2ヶ月前
(1)受給状況の確認
・年金証書で受給している年金の種類を確認
・20歳前傷病かどうかを確認
・有期認定か永久認定かを確認
・次回更新時期の確認
(2)年金事務所への相談予約
・ねんきんダイヤル(0570-05-1165)で予約
・海外転出の旨を伝え、必要な手続きを確認
(3)金融機関の確認
・現在の受取口座が海外転出後も使用可能か確認
・オンラインバンキングの設定確認
・海外送金の手数料を確認(必要な場合)
出国2ヶ月前〜1ヶ月前
(4)更新時期が近い場合の対応検討
・海外滞在中に更新時期を迎える場合、一時帰国の検討
・または現地での診断書取得の可能性を調査
(5)必要書類の準備
・年金証書の原本確認
・本人確認書類の準備
・委任状の準備(代理人に手続きを依頼する場合)
(6)国民年金任意加入の検討
・将来の年金額を増やしたい場合は検討
・加入条件と保険料の確認
出国1ヶ月前〜2週間前
(7)市区町村での海外転出届
・転出予定日の14日前から手続き可能
・住民票の除票を取得(証明書として保管)
(8)年金事務所での手続き
・住所変更届の提出(海外住所を記載)
・20歳前傷病の場合は支給停止事由該当届を提出
・受取方法の最終確認
(9)金融機関での手続き
・住所変更手続き(海外住所への変更)
・受取口座の継続使用の最終確認
・オンラインバンキングのセキュリティ設定
出国直前〜出国後
(10)郵便物の転送手続き
・郵便局で海外転送の手続き(可能な場合)
・または国内の親族などに転送
(11)連絡先の確保
・日本での緊急連絡先を年金事務所に登録
・メールアドレスの登録(可能な場合)
(12)到着後の届出
・海外での住所が確定したら年金事務所に連絡
手続き詳細:ステップ・バイ・ステップガイド
ステップ1:市区町村での海外転出届
いつ手続きするか
出国予定日の14日前から手続き可能
必要なもの
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
・印鑑(自治体によっては必要)
・転出届(窓口で記入)
手続き内容
・転出予定日を記入
・転出先の国名を記入(住所が確定していれば記載)
・住民票の除票を発行してもらう(有料、1通300円程度)
重要な注意点
✓ 転出届を出すと、国民健康保険は自動的に資格喪失します
✓ 住民税は1月1日時点の住所地で課税されるため、年の途中で出国しても当年分は課税されます
✓ 20歳前傷病による障害基礎年金は、この転出届により支給停止となります
ステップ2:年金事務所での手続き
必要な書類
(1)年金受給権者住所変更届
・年金事務所で入手または日本年金機構のウェブサイトから様式をダウンロード
・海外の住所を記載(わかる範囲で)
(2)年金証書
・基礎年金番号と年金コードの確認用
(3)本人確認書類
・パスポート、マイナンバーカードなど
(4)支給停止事由該当届(20歳前傷病の場合のみ)
・海外転出により支給停止されることを届け出る書類
・年金事務所で入手または日本年金機構のウェブサイトから様式をダウンロード
(5)委任状(代理人が手続きする場合)
・本人の自署が必要
手続きの流れ
【窓口での手続き(推奨)】
(1)年金事務所で受付番号を取得
(2)順番が来たら、海外転出の旨を説明
(3)必要書類を提出し、担当者の説明を受ける
(4)海外での受給方法を確認
(5)控えを受け取り、内容を確認
所要時間: 30分〜1時間程度(混雑状況による)
【郵送での手続き】
(1)必要書類をコピーして控えを保管
(2)本人確認書類のコピーを添付
(3)最寄りの年金事務所または日本年金機構に郵送
(4)2〜3週間後、手続き完了を確認
年金事務所で確認すべき重要事項
✓ 海外での受給方法
✓ 現況届の提出方法と時期
✓ 更新時期が海外滞在中の場合の対応方法
✓ 緊急連絡先の登録方法
✓ 帰国時の手続き方法
ステップ3:金融機関での手続き
海外転出後も使用可能な口座の確認
多くの日本の銀行では、海外転出後も口座を継続利用できますが、金融機関により対応が異なります。
【主要銀行の対応例(2025年時点)】
・三菱UFJ銀行:海外転出後も利用可能(住所変更手続き必要)
・三井住友銀行:海外転出後も利用可能(条件あり)
・みずほ銀行:海外転出後も利用可能(住所変更手続き必要)
・ゆうちょ銀行:海外転出後も利用可能(国内連絡先の登録必要)
※各金融機関により条件が異なるため、必ず事前に確認してください
必要な手続き
(1)住所変更手続き
・海外住所への変更(またはオンライン上の登録のみの場合あり)
・国内の親族の住所を登録する場合もあり
(2)連絡先の更新
・メールアドレスの登録
・国際電話番号の登録
(3)オンラインバンキングの設定
・海外からアクセス可能か確認
・二段階認証の設定確認(日本の携帯電話番号が必要な場合あり)
・ワンタイムパスワードの発行方法確認
ステップ4:その他の重要手続き
国民年金の任意加入(検討推奨)
海外転出により、国民年金の被保険者資格は自動的に喪失します。ただし、任意加入を選択することで、保険料を納付し続けることができます。
【任意加入のメリット】
・将来の老齢年金額が増える
・障害年金の受給には直接影響しないが、老後の備えになる
・帰国後の手続きが簡単
【任意加入のデメリット】
・保険料の負担(月額17,510円、2025年度)
・海外からの送金手続きが必要
【手続き方法】
・出国前に市区町村または年金事務所で手続き
・口座振替またはクレジットカード払いの設定が推奨
郵便物の転送
年金関係の重要書類(現況届、年金額改定通知書など)は郵送で届きます。
【対応方法】
・郵便局の転送サービス(国内のみ、海外転送は有料で別途手続き)
・国内の親族の住所に転送してもらう
・年金事務所に国内連絡先を登録し、そこに送付してもらう
特別なケース別対応
ケース1:20歳前傷病による障害基礎年金受給者
このケースは最も注意が必要です。
支給停止の詳細
・海外転出届を提出した日の属する月の翌月分から支給停止
・帰国して住民票を戻した日の属する月の翌月分から支給再開
具体例:
・3月15日に出国、3月20日に海外転出届提出 → 4月分から支給停止
・翌年2月10日に帰国、2月15日に転入届提出 → 3月分から支給再開
必要な手続き
(1)出国前
・「支給停止事由該当届」を年金事務所に提出
・支給停止の時期を確認
(2)帰国時
・「支給停止事由消滅届」を年金事務所に提出
・支給再開の手続き
よくある誤解と注意点
✗ 誤解:「短期間なら大丈夫だろう」
→ 期間に関わらず、住民票を抜けば支給停止されます
✗ 誤解:「住民票を残しておけば大丈夫」
→ 実際に海外に居住しているのに住民票を残すのは虚偽申告になる可能性があります
✓ 正しい対応:事前に年金事務所に相談し、正しい手続きを行いましょう
生活設計の考え方
支給停止期間中の生活費を事前に準備しておく必要があります。
・海外での就労収入
・貯蓄
・家族からの援助
などを組み合わせて、生活設計を立てましょう。
ケース2:有期認定で海外滞在中に更新時期を迎える
これは非常に複雑なケースで、慎重な対応が必要です。
基本的な対応方針
推奨:更新時期に合わせて一時帰国し、日本の医療機関で診断書を取得
なぜ一時帰国が推奨されるのか?
(1)診断書の様式の問題
・日本の障害年金用診断書は特殊な様式
・海外の医療機関では対応が困難
(2)診断基準の違い
・日本の障害認定基準に沿った記載が必要
・海外の医師は日本の基準を理解していない
(3)言語の問題
・診断書は日本語で記載する必要がある
・翻訳では微妙なニュアンスが伝わらない可能性
どうしても一時帰国できない場合
以下の方法を検討しますが、リスクが高いことを理解してください:
(1)海外の医療機関で英文の診断書を取得
・日本語に翻訳
(2)日本の医療機関に相談
・主治医と連絡を取り、可能であれば書類のやり取りで対応
・ただし、実際の診察なしでの診断書発行は困難
更新の準備スケジュール
【更新6ヶ月前】
・年金事務所に相談し、対応方法を確認
・一時帰国の日程調整(推奨)
【更新3ヶ月前】
・診断書用紙が日本の住所に送付される
・国内の連絡先に転送してもらい、海外に送付
【更新期限まで】
・診断書を取得
・必要書類を揃えて年金事務所に提出(郵送可)
ケース3:海外の住所が頻繁に変わる場合
デジタルノマドや、複数国を移動しながら生活する場合などが該当します。
対応方法
(1)日本の親族の住所を登録
・年金関係の書類は日本の住所に送付してもらう
・オンラインで連絡を取り、必要書類を転送してもらう
(2)メールアドレスの登録
・可能な限り、年金事務所にメールアドレスを登録
・重要な連絡をメールで受け取れるようにする
(3)定期的な連絡
・年に1回程度は年金事務所に連絡し、状況を報告
ケース4:社会保障協定締結国への移住
日本は複数の国と社会保障協定を締結しており、これらの国に移住する場合は特別な配慮があります。
社会保障協定締結国(2025年時点)
ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン、イタリア(順次追加)
協定のメリット
- 年金の二重加入を防止
- 年金加入期間の通算
- 障害年金の支給要件の調整(国により異なる)
詳しくは日本年金機構のウェブサイトまたは年金事務所で確認してください。
海外生活中の年金管理
1. 現況届の提出(毎年必須)
現況届とは?
年金を受給している方が、毎年提出する「生存確認」と「受給要件確認」のための書類です。
提出時期
・誕生月の末日まで
・ハガキ形式の用紙が誕生月の初めに送付される
海外在住者の提出方法
(1)在外公館での証明
・現況届に在外公館(日本大使館・領事館)の証明を受ける
・証明には手数料がかかる場合あり(国により異なる)
・パスポートなどの本人確認書類が必要
(2)現地の公証人による証明
・国によっては公証人(Notary Public)の証明でも可能
・年金事務所に事前確認が必要
提出を忘れた場合
・年金の支払いが一時差し止めになる
・最悪の場合、年金が停止される
・提出が確認され次第、遡って支払われる
重要: 現況届は非常に重要です。提出期限を必ず守りましょう。
2. 年金額の改定通知
年金額は毎年4月に改定されます(物価スライドなど)。改定通知書は郵送で届きますが、海外在住者は以下の点に注意:
・通知書の到着が遅れる可能性
・メールでの通知は現在のところ不可
・ねんきんネットで確認可能(要登録)
3. 税金と確定申告
日本の税金
障害年金は非課税です。所得税・住民税はかかりません。
ただし、以下の点に注意:
・他に所得がある場合(不動産収入など)は確定申告が必要
・海外転出後も日本国内に所得がある場合、納税管理人の選任が必要
居住国の税金
国により異なりますが、多くの国では障害年金は非課税または軽減税率が適用されます。居住国の税制を確認してください。
4. 為替レートと生活費の管理
障害年金は円建てで支給されるため、為替レートの変動が生活費に大きく影響します。
リスク管理の方法
・複数通貨での資産保有
・現地での収入確保(可能な場合)
具体例:
月額7万円の障害年金の場合
・1ドル=120円の時:583ドル
・1ドル=150円の時:466ドル
→ 為替レートにより、実質的な受取額が大きく変動
帰国時の手続きと支給再開
帰国前の準備
(1)帰国日の確定
・航空券の予約確認
・転入届を提出できる日程の確認
(2)年金事務所への事前連絡
・帰国予定を伝える
・必要な手続きを確認
(3)必要書類の準備
・パスポート
・年金証書
・海外での医療記録(有期認定の場合)
帰国後の手続き
ステップ1:市区町村での転入届
帰国後14日以内に、新しい住所地の市区町村で転入届を提出します。
・本人確認書類(パスポートなど)
・印鑑(自治体により必要)
・転入届(窓口で記入)
ステップ2:年金事務所での手続き
(1)住所変更届の提出
・帰国後の住所を届け出る
(2)支給停止事由消滅届の提出(20歳前傷病の場合)
・支給再開の手続き
・転入届を提出した日がわかる書類(住民票など)
ステップ3:金融機関での手続き
・住所変更手続き(国内住所への変更)
・オンラインバンキングの設定確認
・通帳の更新(必要な場合)
支給再開のタイミング
20歳前傷病の場合:
・転入届を提出した月の翌月分から支給再開
具体例:
・2月15日に帰国、2月20日に転入届提出 → 3月分から支給再開
その他の場合:
・帰国による支給停止はないため、継続して受給
帰国後の注意点
(1)年金額の確認
・海外滞在中に年金額の改定があった場合、反映されているか確認
(2)書類の整理
・海外での医療記録を保管
・次回更新時に役立つ可能性
(3)今後の更新に備えて
・日本の医療機関との関係を再構築
・定期的な通院記録の作成
よくある質問(FAQ)
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海外に住んでいても、障害年金は日本円で受け取れますか?
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はい、日本の銀行口座で受け取りを希望する時には、日本円で振り込まれます。
海外の銀行口座で受け取りを希望する時には、国ごとに指定された送金通貨になります。
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海外に長期滞在する場合、住民票は抜かなければいけませんか?
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法律上、海外に1年以上滞在する場合は、原則として海外転出届を提出する必要があります。
ただし、以下の場合は住民票を残せる可能性があります:
・1年未満の短期滞在
・生活の拠点が日本にあると認められる場合
詳しくは市区町村の窓口で確認してください。注意: 20歳前傷病による障害基礎年金を受給している方は、住民票を抜くと支給停止されるため、特に慎重な判断が必要です。
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海外の医療機関で診断書を取得できますか?
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法律上は可能ですが、実務上は非常に困難です。
理由:
・日本の障害年金用診断書は特殊な様式
・海外の医師は日本の障害認定基準を理解していない
・日本語での記載が必要
可能な限り、更新時期に一時帰国して日本の医療機関で診断書を取得することを強く推奨します。
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海外滞在中に障害の状態が悪化した場合、どうすればいいですか?
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以下の対応を検討してください:
(1)現地の医療機関を受診
・診断書を取得(英文で可、日本語の翻訳が必要)し、額改定請求(増額請求)を検討(2)可能であれば一時帰国
・日本の医療機関で診察を受ける
・診断書を取得し、額改定請求(増額請求)を検討(3)年金事務所に相談
・海外からでも電話やメールで相談可能
・国際電話料金に注意
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現況届を期限までに提出できなかった場合、どうなりますか?
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以下の流れで対応されます:
(1)期限後1〜2ヶ月:催促状が送付される
(2)期限後3ヶ月:年金の支払いが一時差し止め
(3)期限後6ヶ月:年金の支給が停止される可能性
ただし、提出が確認されれば、遡って支払われます(支給停止前の場合)。
気づいた時点で、すぐに年金事務所に連絡し、現況届を提出してください。
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海外転出時に国民年金の任意加入は必要ですか?
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障害年金の受給には直接影響しないため、必須ではありません。
ただし、以下のメリットがあるため、検討する価値があります:
・将来の老齢年金額が増える
・保険料納付済期間が増える(他の年金要件に影響)デメリット:
・保険料の負担(月額17,510円、2025年度)
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20歳前傷病で支給停止されている間、保険料を払う必要はありますか?
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いいえ、保険料を払う必要はありません(そもそも20歳前傷病の障害基礎年金は、保険料を納付していない期間の障害に対する給付です)。
ただし、任意加入を選択すれば、保険料を納付することはできます(将来の老齢年金額を増やすため)。
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海外で結婚した場合、年金に影響はありますか?
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障害年金の受給には直接影響しません。ただし、以下の手続きが必要になる場合があります:
・氏名変更の届出(年金事務所)
・年金証書の再交付(氏名変更後)
また、配偶者がいることで加算額が変わる年金種別(障害厚生年金の配偶者加給年金など)もあるため、年金事務所に確認してください。
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海外から年金事務所に電話で相談できますか?
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はい、可能です。ただし、以下の点に注意してください:
・ねんきんダイヤル(0570-05-1165)は海外からはつながりません
・一般電話番号(+81-3-6700-1165)を利用してください
・国際電話料金がかかります
・時差を考慮して、日本の営業時間(平日8:30〜17:15)に電話してください
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社会保障協定を締結している国に移住する場合、手続きは変わりますか?
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基本的な手続きは同じですが、以下の点が異なる場合があります:
・協定に基づく特例措置がある場合がある
・現地の年金制度との調整が必要な場合がある
・書類の提出方法が簡素化される場合がある
詳しくは、年金事務所または移住先国の年金担当機関に確認してください。
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トラブル事例と対処法
事例1:現況届の提出を忘れて年金が止まった
状況:
Aさん(障害厚生年金2級)は、アメリカに留学中。現況届を提出し忘れ、6ヶ月後に年金が止まった。
原因:
・郵便物の転送先を設定していなかった
・誕生月に現況届が届いていることに気づかなかった
対処法:
・すぐに年金事務所に国際電話で連絡
・在米日本大使館で現況届の証明を受けて提出
・2ヶ月後、遡って年金が支払われた
教訓:
✓ 郵便物の転送先を必ず設定する
✓ 誕生月が近づいたら、国内の連絡先に確認する
✓ 可能であれば、ねんきんネットに登録して通知を受け取る
事例2:海外の医療機関で診断書を取得したが、更新が認められなかった
状況:
Bさん(障害基礎年金2級、うつ病)は、イギリスに移住。更新時期に現地の精神科医で診断書を取得したが、「診断書の様式が異なる」として不支給決定を受けた。
原因:
・海外の医療機関が日本の様式を理解していなかった
・翻訳が不正確だった
・日本の障害認定基準に沿った記載がなかった
対処法:
・審査請求(不服申立て)を行った
・一時帰国して日本の医療機関で改めて診断書を取得
・再審査の結果、認定された
教訓:
✓ 更新時期には一時帰国して日本の医療機関で診断書を取得する
✓ やむを得ず海外で取得する場合は、事前に年金事務所に相談する
✓ 診断書用紙を海外に送ってもらい、できるだけ日本の様式に沿って記載してもらう
事例3:20歳前傷病であることを知らずに海外転出し、生活に困窮
状況:
Cさん(障害基礎年金2級)は、オーストラリアにワーキングホリデーで渡航。海外転出届を提出したところ、翌月から年金が止まり、生活費に困った。
原因:
・自分の年金が20歳前傷病によるものだと理解していなかった
・年金事務所に事前相談をしていなかった
・支給停止についての説明を受けていなかった
対処法:
・急遽帰国を決定
・帰国後、転入届を提出し、支給再開の手続き
・約2ヶ月後、年金が再開された
教訓:
✓ 海外転出前に、必ず年金事務所で自分の年金の種類を確認する
✓ 20歳前傷病の場合、海外転出により支給停止されることを理解する
✓ 生活費の準備をしてから渡航する
事例4:金融機関の口座が凍結された
状況:
Dさん(障害厚生年金3級)は、タイに移住後、日本の銀行口座が凍結され、年金を受け取れなくなった。
原因:
・金融機関に海外転出を届け出なかった
・長期間、口座を使用していなかった
・金融機関が海外在住者の口座利用を制限する方針に変更した
対処法:
・金融機関に連絡し、事情を説明
・本人確認書類を提出して口座を再開
・別の金融機関に受取口座を変更
教訓:
✓ 海外転出前に、金融機関に必ず連絡する
✓ 海外在住者の口座利用が可能な金融機関を選ぶ
✓ 定期的に口座を利用して、凍結を防ぐ
チェックリスト:手続き漏れ防止用
以下のチェックリストを印刷し、手続きの進捗管理にご活用ください。
【出国3ヶ月前〜2ヶ月前】
- (1)年金証書で受給している年金の種類を確認
- (2)20歳前傷病かどうかを確認
- (3)有期認定か永久認定かを確認
- (4)次回更新時期の確認
- (5)年金事務所への相談予約
- (6)金融機関の海外転出後の利用可否を確認
【出国2ヶ月前〜1ヶ月前】
- (7)更新時期が近い場合、一時帰国の検討
- (8)必要書類の準備(年金証書、本人確認書類など)
- (9)国民年金任意加入の検討
- (10)委任状の準備(代理人に依頼する場合)
【出国1ヶ月前〜2週間前】
- (11)市区町村で海外転出届を提出
- (12)住民票の除票を取得
- (13)年金事務所で住所変更届を提出
- (14)20歳前傷病の場合、支給停止事由該当届を提出
- (15)金融機関で住所変更手続き
- (16)オンラインバンキングの設定確認
【出国直前〜出国後】
- (17)郵便物の転送手続き
- (18)日本での緊急連絡先を年金事務所に登録
- (19)海外での住所確定後、年金事務所に連絡
- (20)現況届の提出時期をカレンダーに登録
【海外滞在中(毎年)】
- (21)現況届を期限までに提出
- (22)年金額改定通知を確認
- (23)更新時期が近づいたら準備開始(有期認定の場合)
- (24)書類の控えを保管
【帰国時】
- (25)市区町村で転入届を提出
- (26)年金事務所で住所変更届を提出
- (27)20歳前傷病の場合、支給停止事由消滅届を提出
- (28)金融機関で住所変更手続き
まとめ:海外転出を成功させる7つのポイント
障害年金を受給しながらの海外転出は、適切な準備と手続きで安心して行うことができます。以下の7つのポイントを押さえましょう:
【ポイント1】自分の年金の種類を正確に把握する
→ 特に20歳前傷病かどうかは重要
【ポイント2】出国3ヶ月前から準備を開始する
→ 余裕を持ったスケジュールで進める
【ポイント3】年金事務所に事前相談する
→ 自分のケースに合った手続きを確認
【ポイント4】金融機関の対応を確認する
→ 海外転出後も利用可能な口座を確保
【ポイント5】更新時期は一時帰国を検討する
→ 日本の医療機関で診断書を取得
【ポイント6】現況届を忘れずに提出する
→ 誕生月の末日が期限
【ポイント7】帰国時の手続きも忘れずに
→ 支給再開の手続きを確実に行う
最後に
海外での生活は、新しい経験や成長の機会をもたらします。障害年金を受給していても、適切な準備と手続きを行えば、海外で安心して生活を送ることができます。
この記事を参考にしながら、計画的に準備を進めてください。不明な点があれば、必ず年金事務所に相談しましょう。専門家のサポートを受けながら、安全に海外転出を実現してください。
参考情報源
日本年金機構「海外在住の皆さま」:
https://www.nenkin.go.jp/service/scenebetsu/kaigai.html
日本年金機構「社会保障協定」:
https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/shaho.html
外務省「在外公館リスト」:
https://www.mofa.go.jp/Mofaj/annai/zaigai/list/index.html
法改正情報:
2025年10月現在の情報に基づいています。社会保障協定や制度変更があった場合は、随時更新いたします。